「1番下だと思っている」―昨季0勝の中日大野雄、復活の鍵は「打者との“間”」

実戦形式での登板を行った中日・大野雄大【写真:荒川祐史】

初実戦で12投手の先陣を切って登板、最速147キロを4球記録

 3日に沖縄・北谷公園野球場で行われた中日の実戦形式練習。ベテラン、外国人を除く主力12人の投手が次々とマウンドに上がり、打者4人ずつと真剣勝負を繰り広げていった。オフの段階から予告されていた、この実戦形式。12人の投手が1つの四球も出すこともなく、このキャンプに向けて自主トレを重ね、順調な仕上がり具合となっていることを感じさせた。

 その12人の中でも特に目を引く、圧巻の投球を披露したのが、大野雄大投手だった。12人の中で先陣を切って、まっさらなマウンドに上がった左腕。先頭の京田に対しての初球、詰まらせながらも右翼線に落ちる二塁打を浴びたが、ここからが圧巻。続く高橋周のバットをへし折って一ゴロに仕留めると、大野奨は空振り三振。さらに松井佑もバットをへし折って遊ゴロに打ち取った。この時期としては驚異的な速さの147キロをなんと4球もマーク。打者4人でバット2本を粉砕した。

「しっかり投げられたと思います。京田選手にツーベースは打たれましたけど、実戦形式とはいえ点はやりたくなかった。返されないようにと投げた結果ゼロに抑えられましたし、内容も良かったのでヨシとしたいと思います。走りも良かったし、球も強かったと思う。悪いことじゃないと思う」

 こう振り返った大野雄は、与田剛新監督も、そして中日ファンも復活を願っている投手である。2013年から3年連続で2桁勝利をマークし、2016年と2017年には2年連続で開幕投手も務めた。本来であれば、中日のエースとして君臨しているべき、いや、していなければいけない投手のはず。ところが、昨季は大不振に喘ぎ、1軍登板はわずか3試合。1勝もできないままシーズンは終わり、防御率は8.56。佛教大から入団した2011年のルーキーイヤー以来となる未勝利に終わったのだ。

「北谷にいる投手で1番下だと思っている」

 復活を期す今季。秋季キャンプ、そしてオフの間と「しっかりと打者との“間”を取れるようにという課題でやっていました」と取り組んできた。“間”とは何か。大野雄はキャンプ初日に「(プレートとホームまでの)18.44メートルの“間”、フォームの“間”、空間の“間”ですね」と語っており、この日の打者との初対戦では、成果は「半々くらい」だったという。

 今季にかける思いは当然強い。「アピールしないといけない立場ですし、北谷にいる投手で1番下だと思っている」。3年連続2桁勝利、2度の開幕投手を務めた男は危機感を口にする。「こんなところでホッとしていたらダメですけど、1発目で、2か月前、3か月前から言われていて準備する時間があって変なピッチングはできないので、いい内容で帰ってこられてホッとしています」と、ちょっとだけ安堵の表情を浮かべた。

「結果を出す、アピールしないといけない立場。まだ1発目の実戦で、2戦目、3戦目とここからもやることは変わらない。全力で吠えて、投げていきたい」。登板が終わると、北谷の中日ファンから大きな拍手が巻き起こった。これこそが大野雄への期待の大きさの証。復活を目指して、その左腕を振り抜いていく。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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