「ショーほど危険なものはない」組み体操事故ワースト1位

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組み体操の練習に取り組む小学生ら=2016年、神戸市内

 兵庫県が2015年度から3年連続で不名誉な「全国1位」になった。小中学校で起きた組み体操の事故件数が、ダントツで多いのだ。

 17年度は566人がけがをした。全国で4418人に上るというから、兵庫だけで1割強を占める。「運動にけがはつきもの」などと軽く見てはいけない。過去には全国で少なくとも10件の死亡事故が起きている。

 組み体操のルーツは明治時代の「兵式体操」といわれる。ライターの堀越英美さんによると、例えば肩の上に立って塔を作る「タワー」は、崖などを乗り越えて進軍する「人梯(じんてい)」とそっくりだ。

 戦うための訓練は、やがて運動会の花形種目としてショーアップされていく。だから見栄えが重視された。陸軍幼年学校ですら3段だった人梯は、小学校の5段タワーに“成長”した。

 文部科学省傘下の日本スポーツ振興センターは「タワーは小中とも3段以内」などの安全基準を示している。ところが昨年、兵庫県内で160校が4段、5段に挑戦した。人間ピラミッドに至っては9段の中学校もあった。

 取材すると、教育関係者の歯切れは悪い。一体感や達成感が味わえると効果を説く声はある。だが、次のような意見が少なくなかった。

 「実は疑問を持ちながらやっている。本音はやめたい。でも地域が『伝統だから』『頑張っている子どもを見たい』と言うので…」

 県教育委員会の分析では、段数が低い技でも事故が起きていた。重傷事故の大半は「安全に実施できる指導体制が構築できなかった」のが原因という。現場は指導に悩んでいるのだ。

 正直言うと、自分も組み体操の大技に感動して拍手を送っていた1人だ。でも、よく考えれば、運動会はショーではない。主役は子どもだ。地味でも安全な方がいい。

 ルーツを知り、複雑な感情をぬぐえないでいる。(論説委員室 小林由佳)