ふるさと納税に伴う税収減が実質的に“全国一”の川崎市は、2019年度に反転攻勢に打って出る。多くのスポーツチームが市内に本拠を構える特性に着目。各チームの協力を得て記念品などを返礼品として用意する構想を描く。地域の強みを最大限に生かした試みで、19年度の目標寄付額は従来の約4倍に当たる2億円に設定した。
市財政課によると、市民がふるさと納税を利用したことによる市の減収額は近年急激に増加。15年度は2億円だったが、16年度13億円、17年度30億円、18年度は43億円となり、19年度は49億円に達すると見込まれる。減収額の75%は国が普通交付税で補填(ほてん)するが、川崎市は不交付団体のため補填がなく、実質的な減収額は「全国で最も多い」(同課)という。
一方、市への同納税による寄付額は17年度で5200万円。全国ブランドの農水産物がなく、返礼品のインパクトに欠ける点が苦戦の要因とみられる。
同課は「本来入るべき税収が他の自治体に持っていかれるのを、このまま看過できない」と、攻めの姿勢に転じる理由を説明。返礼品の充実を図る上で注目したのが、全国区の知名度を持つスポーツチームだった。市内ではサッカーJ1リーグを連覇した川崎フロンターレをはじめ、バレーボールやバスケットボール、アメリカンフットボールのチームが活動している。
返礼品競争の過熱化対策として国は、返礼品額を寄付額の3割までとし、地場産品以外は認めないなどの方針を打ち出している。地元に本拠を構える各チームとの連携は、国の示した方向性とも合致するものだった。
具体的な返礼品は現時点では未定。市は各チームと協議を進め、今秋ごろから取り組みをスタートさせる方針。民間のふるさと納税ポータルサイトも活用し、納税者がアクセスしやすいよう利便性の向上にも努めるとしている。