被爆者葬祭料訴訟 原告の訴え退ける 長崎地裁

 亡くなった父は被爆者だったとして、長女(63)=福岡市=が長崎市に、被爆者の遺族らが受け取る葬祭料の申請却下処分の取り消しと、葬祭料に相当する20万6千円の賠償を求めた訴訟の判決で、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)は4日、長女側の訴えを退けた。
 判決などによると、長女の父親は2016年10月、被爆者健康手帳の交付を求め長崎地裁に提訴したが、係争中の17年に93歳で死去。被爆者かどうか判断せず訴訟は終了した。
 判決では「被爆者」は被爆者援護法に規定される要件を満たし「手帳の交付を受けたものを指す」と指摘し、市の処分取り消しを求める長女の訴えを原告適格がないとして却下。賠償請求を棄却した。長女側が、被爆体験者訴訟の最高裁判決(17年12月)が原告死亡後も遺族が訴訟を引き継げると判断したことを踏まえ、葬祭料を請求する権利があると主張した点については、健康管理手当の受給権とは異なり、葬祭料の受給権は相続の対象とはならないとの判断を示した。
 原告側の代理人弁護士は「長女と相談した上で控訴を検討する」としている。田上富久市長は「今後とも適正な審査に努めてまいりたい」とコメントした。

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