ツバキの縁

 ツバキを描いたポルト市の子どもの絵がいくつか並んでいた。わがまちの「シンボル」などと自慢する文を添えて。ポルトガルの港町ポルト市と長崎市の姉妹都市提携40周年を記念した美術交流展が、14日まで長崎ブリックホールで開かれている▲ポルトでは毎年ツバキ祭りが開かれ、あちこちでツバキが華やかに咲き乱れるという。ポルト近郊の旧家の庭には、樹齢数百年といわれるツバキの有名な古木があるとか。交流展に合わせて来崎したポルト在住の美術作家、樋口真美さんが教えてくれた▲西洋のツバキは大航海時代に原産地の東洋から持ち込まれた。物寂しい冬の景色を華やかに彩る花として貴族らに珍重された▲そのルーツは日本かもしれないのだという。ポルト一帯では、ツバキの木をジャポネイラ、ツバキの花をローザ・ド・ジャポン(日本のバラ)と呼ぶそうだ▲ポルトはかつて長崎へやってきたポルトガル貿易船の母港。長崎でツバキの花の美しさに魅せられ、母国に持ち帰った乗組員がいたかもしれない。そんな想像が広がっていく▲ツバキは本県では「県の花木」であり、愛好家も多い。長崎とポルトの人々が、遠い距離を隔てながら同じ花を大切にめでていると思うと、ツバキ咲くまだ寒い季節であっても、ほっこり心が温かくなる。(泉)

© 株式会社長崎新聞社