議員の実情 インタビュー編(中)<女性の活躍> 東京女子大現代教養学部教授・大山七穂氏 社会の多様性につながる

 そもそも、なぜ女性議員が必要なのか。女性を取り巻く社会問題には、女性自身が声を上げることで解決に近づき、議会の多様性は社会の多様性につながる。何より議会と社会の人口比が懸け離れているのは問題だろう。

 日本における女性の政治進出は1990年代に加速した。89年参院選で旧社会党が躍進した「マドンナブーム」をきっかけに草の根の動きが活発化。95年の世界女性会議、99年の男女共同参画社会基本法の成立を経て女性議員は増加した。

 しかし、諸外国と比較すると女性の政治進出はまだまだ、だ。列国議会同盟の調査(2018年11月)によると、国会の女性議員比率は、日本(衆議院で10.1%)は世界193カ国中160位に沈んでいる。

 地方議会を見てみると、女性議員の比率が最も高いのは東京都清瀬市で45%。ある集団が全体に影響を及ぼすには全体の3割を占める必要があるといわれるが、女性議員が3割を超えるのは約40議会だけだ。

 背景には「政治は男のもの」という意識の根深さがある。性別分担役割は今も家庭の中に根付いており、女性が家庭を離れられない風潮もある。選挙で候補者をリクルートする際に、地域のボスのような年配の男性が選ばれるケースが多く、女性や若者などが新規参入しにくい傾向もある。

 ただ、地方議会は地域差が大きい。女性議員の比率が高い自治体は、ほとんどが大都市近郊のベッドタウン。住民が外から入って来やすい地域だ。男性が都市部に働きに出ている間、女性がPTA活動などをきっかけに地域での活動を活発化させ、政治に結び付いていく例も多々見られる。

 昨年、選挙の候補者をできる限り男女均等にするよう促す「政治分野の男女共同参画推進法」が成立。理念法なので罰則はないが、女性議員の登用が進まない政党に、法に結び付けて指摘できるようになったのは大きい。欧州では女性候補者の割合を一定以上にする「クオータ制」を導入した政党が議席を増やし、その後政党が次々に導入した例もある。日本でも政党同士が競って女性の活躍を促すことが期待できるし、有権者も動向を注目すべきだ。

 女性議員の立候補を促進するため、政党には女性向け議員スクールや供託金の免除などでサポートするのが望ましい。育児休暇制度の充実など子育てに対する温かいまなざしも重要だ。有権者も自分が住む地域の議会と他の議会を比べながら、十分吟味して一票を投じることが求められる。

 性別を問わず、自分がこうしたいと思う生き方がかなえられる社会であればいい。そのためには、男性にとっても女性にとっても参画しやすい議会にしなければならない。

 【略歴】おおやま・なお 千葉県出身。東京大大学院博士課程満期退学。東海大文学部教授などを経て現職。著書に「地域社会における女性と政治」など。60歳。

「女性議員の活躍が社会の多様性につながる」と話す大山教授=東京都杉並区、東京女子大

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