社説:一般教書演説 党派対立克服できるか

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 任期を折り返したトランプ米大統領が一般教書演説を行った。

 米上下院で多数派が異なる「ねじれ議会」で与野党が対立し、政策が動かない膠着(こうちゃく)状態に陥っていることを踏まえ、党派を超え「一つの国」を目指そうと訴えた。

 米世論を二分する不法移民対策など政策実現に向け、議会に協力を求めた。だが政権発足後の2年間で社会の分断が深まる中、共和、民主の党派対立の終結と融和につながるかどうかは見通せない。

 一般教書演説は通常、年頭に行われるが、メキシコとの「国境の壁」建設費を巡るトランプ氏と民主党の対立による政府機関閉鎖の影響で延期されていた。

 トランプ氏は雇用拡大や好調な経済を誇示し、「米国経済は世界の羨望(せんぼう)の的となり、米軍は世界最強となった」と自画自賛した。2020年の大統領選をにらみ、支持固めを意識した演説と言える。

 日ごろツイッターで繰り出す攻撃的な口調を封印して「連帯して新たな解決策をつくろう」と語り掛け、「米国再建」に向けた歩み寄りを促すのが目立った。さまざまな分断を招いたのは自らの政策と言動ではないか。譲歩を求めるだけでは融和は望めない。

 例えば移民政策はどうか。「国民の生命と仕事を守る移民制度をつくる義務がある」と述べ、不法移民対策を強化し、「私は壁を建設する」と主張。壁建設費57億ドル(約6200億円)の捻出のため国家非常事態宣言や政府機関の再閉鎖も辞さない構えだ。壁建設を巡り35日間も政府機関が閉鎖し、つなぎ予算も今月15日に切れる。政局混乱に国民の不満は強い。

 内政面の苦境から目をそらす狙いか、外交や通商、安全保障政策のアピールが目立った。

 国益を優先する「米国第一」主義に基づく外交を宣言し、とりわけ中国を意識して貿易不均衡是正に向けた協議進展を強調した。だが米国が問題視している技術移転や知的財産権などの懸念がすぐに解消される可能性は低い。米中貿易摩擦が長引けば世界経済の先行きはますます不透明になる。

 ロシアに破棄を通告した中距離核戦力(INF)廃棄条約に絡めて中国も加えた別の軍縮枠組み交渉への意欲も示したものの、実現のめどは立っていない。新たな軍拡競争への懸念を拭えない。

 日本への言及はなかったが、トランプ氏が「米国第一」に固執すれば、対処を迫られかねない。多国間協調主義を揺るがす深刻な事態と受け止めねばなるまい。 (京都新聞 2019年02月07日掲載)