災害時の電源 病院で確保 医療機器使用の在宅患者支援

西彼杵の医師、医師会 停電備え、家族「安心」

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 人工呼吸器など電源が必要な医療機器を使う在宅患者にとって、災害時の停電は命にかかわる問題だ。近年、日本列島各地で地震、台風、豪雨被害が相次ぎ、昨年9月の北海道地震では全域停電(ブラックアウト)が起きた。県内でも患者や家族が急な停電に不安を募らせる中、医師や医師会が病院での電源確保に協力する動きも出てきた。
 長崎市北部の住宅街に暮らす出口大空ちゃん(2)は月1回、「誕生日」を迎える。3年前の3月22日に出生。毎月22日に家族が色画用紙や折り紙などで冠やかぶとを手作りし、ベッド上の天井に通したひもに飾って祝う。それぞれに2桁の数字が書かれており、今年1月25日は「25」から「34」までの10個が並んでいた。「今は25カ月(2歳1カ月)のものから飾っていて、あと2カ月で36カ月、3歳になります」。母親の光都子(みつこ)さん(46)は笑顔で話した。
 大空ちゃんは「18トリソミー」という染色体の病気で、気管軟化症などを患っている。生後2カ月の時、手術で気管を切開し、人工呼吸器を装着。心拍と酸素飽和度を測るモニターも付けており、電源が欠かせない。台風が近づくたびに光都子さんは「停電にならないで」と祈る。人工呼吸器は6、7時間、モニターも5時間ほどしか内蔵バッテリーがもたない。もし切れたら酸素ボンベなどで一時的にしのぐしかない。
 大空ちゃんが通院する長崎大学病院は自宅から車で30分以上かかる。このため、訪問診療する「しもむらクリニック」(西彼時津町)の下村千枝子医師は災害時の停電に備え、車で5分ほどで行ける光風台病院に電源を提供してもらえるよう交渉し、承諾を得た。病院は停電になっても自家発電がある。院長らが大空ちゃんと面会し、昨年6月から電源を使えるようになった。光都子さんは「安心した」と胸をなで下ろす。
 下村医師は「大学病院は基幹病院なので、災害時は救急患者が運び込まれ、大変な状況になる可能性がある。電源を借りるのであれば自宅近くの病院にお願いできればいいし、医師や看護師もいて心強い。2日間ほど持ちこたえれば、自衛隊や災害派遣医療チーム(DMAT)が駆けつけ、県外の病院などに避難できる」と話す。
 ただ医師個人が担当患者と、普段通院していない病院をつなぐのは容易ではない。光風台病院は、院長が下村医師と知り合いだったためスムーズに話は運んだが、通常はつてを頼りに患者の状態や電源が必要な理由などを一から説明しなければならない。
 下村医師が理事を務める西彼杵医師会(萬木信人会長)は昨年、活動範囲の西海市と西彼長与、時津両町で、電源が必要な医療機器などを使う在宅患者を対象に、停電時には同会所属や近隣の病院で受け入れる制度をスタートさせた。全国でも珍しいという。患者側が了承すれば、主治医らが3市町を通じて医師会に医療機関のあっせんを依頼。医療機関が承諾すれば患者側に通知する。現在、4人が制度を利用している。
 下村医師は「電源対策としてベストではないかもしれないが、現時点ではベターな選択肢だと思う。今後避難訓練も実施したい。もっと制度が広がってほしい」と話している。

人工呼吸器を装着している大空ちゃん(右)と母親の光都子さん。中央にあるのが人工呼吸器とモニター=長崎市内