北陸新幹線、湿地のトンネル着工

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掘削が始まった北陸新幹線の「深山トンネル」の工事現場=福井県敦賀市

 国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録されている福井県敦賀市の中池見湿地の一部を通る北陸新幹線ルートの「深山トンネル」(全長768メートル)の掘削工事が、1月中旬から始まった。建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、工事による湿地への悪影響を回避、低減するための「環境管理計画」を策定し、工事中の水環境や生態系を監視。湿地の水位が低下した場合の緊急対策なども準備している。

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 トンネルを建設する深山は湿地東側のラムサール条約登録範囲内にあり、湿地に流れる地下水の水源の一つとなっている。

 鉄道・運輸機構によると、新幹線の通常の山岳トンネルは馬てい形の断面で地下水を集めて排水するが、深山トンネルは直径約10メートルの円形断面で、トンネル内に地下水を引き込まないよう全周を防水シートで覆う。この「非排水型」の円形断面の構造は地下水の減少を抑制する効果があり、北陸新幹線ルートでは初の採用という。

 掘削工事は同市大蔵側の山の斜面で始まり、地表からの高さ約30メートルの位置まで上る工事用道路が整備され、既にトンネル構造物の一部が設置された。貫通はおおむね1年後、完成は2020年夏か秋頃の予定。

 トンネル工事に伴う環境管理計画は、水環境や動植物などの専門家らでつくる委員会の審議を経て昨年10月に策定。湿地周辺の沢水や観測井戸で工事業者が毎日、地下水位や流量を計測するほか、水質分析も季節ごとに年4回行う。

 万が一水位低下などの影響が出た場合は、速やかに水位を回復させるため応急対策を用意。湿地の「後谷(うしろだに)」から流れ出る水をポンプを使って源流の湧水箇所に還流させる方法で、既に配管などを整備した。

 生態系のモニタリングは、ラムサール条約登録要件になった渡り鳥ノジコや、クマタカなどの猛禽類のほか、水環境の変化による間接的な影響を受けやすいキタノメダカなど14種類の動植物を指標生物に選定し監視する。

 鉄道・運輸機構は「中池見湿地の重要性は十分認識しており、湿地への影響が極力出ないよう慎重に工事を進めたい」とし、工事終了後も一定期間モニタリングを継続する方針。

 同湿地の保全活動に取り組むNPO法人ウエットランド中池見の笹木智恵子理事長は「環境管理計画で一応形は整えたが、この先の工事の影響は未知数。NPOでも監視し、変化があれば連絡して対処してもらうしかない」と話している。