詐欺グループのリーダー役で主演の中村蒼「特殊詐欺は身近に潜んでいると感じる」

NHK総合で3月23日放送の「NHKスペシャル『詐欺の子』」(午後9:00)の取材会が行われ、主演の中村蒼、共演のイッセー尾形、桃井かおりらが出席した。同番組は振り込め詐欺の加害者となる少年たちの実態をドラマとドキュメントで明かすもので、少年を使った詐欺グループの“かけ子”のリーダー・嘉川大輔役を演じる中村は「これまで特殊詐欺を意識したことはなかったのですが、いつ自分や自分の周りに降りかかってきてもおかしくないほど身近に潜んでいるものだと感じています。この作品は複数の事実を基に作られたドラマですので、きっと説得力のある内容になっていて、見てくださった皆さんの心に何か引っ掛かる作品になっていると思います」と見どころを訴えた。

複数の事実を基にしたドラマでは、娘をかたる女から電話がかかってきた一人暮らしの小山田光代(桃井)が警察に通報し、現れた14歳の“受け子”の三浦和人(渡邉蒼)が逮捕される。和人を送り込んだのは、幼なじみの大輔と遠山元宏(長村航希)で、2人は「老人の『死に金』を社会に還元する義挙」だと信じ、巧みなうそで受け子に話を持ち掛け、荒稼ぎを繰り返していた。しかし遠山も逮捕され、様子をうかがうために裁判を傍聴に行った大輔は、証人として出廷した光代の話を聞くうちに自分たちの詐欺によって苦しむ被害者の心情を知ることになる。

ドキュメンタリー部分では2018年に日本最大の多摩少年院に入院した少年の理由の第1位が「窃盗」を抜いて「振り込め詐欺」となったことや、2003年頃から始まり15年がたつ「振り込め詐欺」の被害が毎日1億円にも上る実態も明かす。

光子役の桃井は「お金をだまし取られたのに、息子の声も分からないのか、そんなお金があったのかなど、いろんなことを言われて、そしてそれがすぐに知れ渡ってしまう時代。でも本当につらいことは“簡単にだまされてしまったのだ”と認めざるを得ないことだと思います。今回、私はだまされていても、それが本当だったのだと信じたい女性を演じています」と被害者の心情に寄り添ったことを告白。

遠山の国選弁護人・河北孝一役の尾形も「NHKのニュース番組の『STOP詐欺』というコーナーをいつも見ていますが、毎回取り上げる手口が違う点に驚いています。今回、ドキュメンタリーとドラマを両方取り入れていて、ドキュメンタリーだけではとらえきれない、心の揺らぎといったところまで迫る試みだと思っています」と番組の意義を強調していた。

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