鷹ドラ1甲斐野に絶賛の嵐 工藤監督「ポテンシャル高い」甲斐「低め伸びる」

打撃投手として登板したソフトバンク・甲斐野央【写真:福谷佑介】

7日に初の打撃投手登板、柳田のバットをへし折り最速150キロマーク

 衝撃が走った。「グシャッ」。鈍い音とともにバットは真っ二つに折れ、折れたバットは、マウンド後方で球出しをしていた高村祐投手コーチをかすめた。騒然とするグラウンド上と、そしてスタンド。ソフトバンクが春季キャンプを行なっている宮崎・生目の杜運動公園。第2クール最終日の7日、フリー打撃中のひと幕だった。

 バットを折られたのは、球界最強打者の柳田悠岐。そして、へし折ったのが、ドラフト1位の甲斐野央投手だった。キャンプ初の打撃投手登板。上林誠知外野手に17球を投げて、安打性は2本。そして柳田には20球を投げて安打性はわずか1本。柳田に投じた14球目で冒頭の衝撃シーンが起きたのだった。

 初めてプロの打者と対戦した甲斐野。降板後は「投げる前はプロのバッターに投げるということで緊張はありましたが、投げてしまうと、まずは自分のボールを投げることに集中して、甲斐さんのミットを目掛けて投げることだけでした」と振り返り、柳田のバットをへし折ったことにも「泳がれての折れ方。詰まって折れたわけじゃないので満足してません」とサラリと言ってのけた。

 この日、甲斐野のボールは最速で150キロをマーク。しかも1球だけでなく、複数のボールで大台に達しており、それ以外もほとんどのボールが149キロを計測していたという。この時期としては驚異的なスピードだが、甲斐野本人の中では反省も。「体が開いて、手が頭から離れていたと、甲斐さんにも言われました。ブルペンとマウンドをイコールにすることが課題。今日は課題も収穫もありました」と語った。

 とはいえ、ドラ1右腕のボールには周囲から絶賛する声が相次いだ。工藤公康監督は「速かったね。この時期に150キロを投げられたら打者はなかなか打てない。ポテンシャルが高いからドラフト1位で取っているんだし、もちろんポテンシャルは高いと思います」と言えば、倉野信次投手コーチも「良かったですね。ブルペンよりも球質が安定していたのが良かった」という。

 柳田は「見逃すつもり」だった初球を見送った際に思わず「速っ!」と声をあげた。柳田の前に打席に立った上林も「速いですね」と語り、ボールを受けていた甲斐拓也は「良かったと思います。低めから伸びてくるような球筋ですね」と目を細めた。まだ打撃投手の段階で、今後の実戦を経なければ、本当のところは分からないが。それでも現時点では大きな期待感を抱かせる内容だった。

「(柳田さんは)泳いだから折れたのだと思いますし、目慣れもしていない。投手が完璧に有利な時期なので」と浮かれる様子など微塵も見せなかった甲斐野。9日からの第3クールでは実戦形式もスタートする予定だ。ここからの甲斐野のピッチングに注目だ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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