「思いやりで事故減らせる」 自身の飲酒運転被害通じて講演 口加高・吹奏楽部顧問 前川さん

「相手を思いやれば、悲しい事故の被害者を減らせる」と講演する前川さん=南島原市、加津佐総合福祉センター「希望の里」

 吹奏楽部でトランペットに打ち込んでいた高校時代に飲酒運転の交通事故に遭いながらも、音楽の道を歩み続けている県立口加高講師、前川希帆さん(23)が南島原市で講演。自身の体験を通じて、出席した約100人の市民らに飲酒運転撲滅を訴えた。
 前川さんは2013年、音楽大の入試に車で向かう途中、北松佐々町の国道で酒気帯び運転の男の車による事故に巻き込まれ、前歯4本を失い唇にも傷を負った。入学はしたが思うようにトランペットの音色が出せず「なぜ私が被害に」と何度も心が折れかけていた。
 転機は帰省中に体験した母校の県立佐世保東翔高での部活指導。「一から音楽をつくる喜びを生徒と共有したい」と音楽教諭を目指すようになった。本年度、口加高の講師となり、吹奏楽部顧問としても生徒らに音の楽しさを教えている。
 前川さんは「周りの支えで今の自分がある。相手を思いやれば被害者を減らせる。活躍する同級生は正直うらやましいが、私は私。被害の経験を伝え、悲しい事故を無くしたい」と語った。
 前川さんは初めての教え子、3年生5人と演奏も披露。「ヤングマン」「WAになっておどろう」など軽快な4曲で会場を盛り上げた。
 前川さんが講演したのは2日にあった南島原署主催の「飲酒運転追放の会」。昨年秋、南島原市内で酒気帯び運転容疑の逮捕が5件続いたため企画。DVD放映や若手署員による「みそ五郎劇団」の寸劇などもあった。

教え子と軽快な演奏を披露する前川さん(左から3人目)

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