【熊本城のいま】「要注目種」シダ ひっそり生息

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熊本城に生息する「要注目種」のヒメウラジロ=4日、熊本市
西田さんらが調査し、約300種類を写真付きでまとめた「熊本城の植物」

 熊本市役所の北西にある須戸口[すどぐち]門から、許可を得て熊本城内に入り、右に折れると門の西側の石垣に長さ5センチほどの小さなシダがあった。今月4日のことだ。「これがヒメウラジロですよ」と、案内してくれた市文化振興課の西川公夫さん(65)。葉をめくると裏側が白い。石垣の間にたまった土に、ひっそりと根を張っていた。城内の生息域は、はっきり分かっていないという。

 ヒメウラジロは、希少な野生の動植物をまとめた県の「レッドリストくまもと2014」で「要注目種」に指定。今後状況によって、絶滅危惧種になる可能性が高い植物だ。環境省の分類では、絶滅の危険が増大している「絶滅危惧Ⅱ類」とされている。

 熊本城内には多様な植物がいる。それらを詳しくまとめたのが、2007年に刊行された「熊本城の植物」だ。熊本博物館の講座に集まった市民らでつくる「熊本博物館植物同好会」の有志が03年から4年間、熊本城内を調査。約300種類を写真付きで紹介している。

 調査チームの代表で、当時博物館の学芸員だった西田靖子さん(43)=福井市=は、日ごろからお城で希少な植物を見つけたら、市の職員に「除草剤をかけたり抜いたりしないで」と伝えていた。熊本地震が起こった時は既に熊本を離れており、植物の様子を心配していた西田さんは「ヒメウラジロが今もいると聞いてとてもうれしい」と声を弾ませた。

 調査メンバーだった木村義倫さん(75)=熊本市=は、お城のヒメウラジロを移植した経験がある。市は08年に天守前広場の東側に長局櫓[ながつぼねやぐら]を復元する際、支える石垣の一部を積みなおすことにした。そこにはヒメウラジロが生息しており、木村さんは石垣の解体に合わせて20株ほどを採集し、積みなおしが終わって再び石垣の隙間に戻したという。

 「植え替えたヒメウラジロは全滅してしまいました。植物は同じ場所に移植しても元通りにならない」と木村さん。西川さんは「石垣の上に建物がたってしまうと、日当たりが変わり、石垣にも雨水が入りにくくなる。いったん石垣を解体すると、そこにいる植物にとって環境が変わるのだろう。日頃からどんな植物がいるか、気を付けて見ておく必要がある」と話している。(飛松佐和子)

(2019年2月8日付 熊本日日新聞朝刊掲載)