LGBT結婚式の今 受け入れ式場増加、戸惑いも

 「婚姻届は受理してもらえない。2人の関係、認めてほしい」

©株式会社全国新聞ネット

関かおり

共同通信

関かおり

共同通信

2013年入社。名古屋支社、静岡支局、浜松分室を経て47ニュース編集部に。将来の夢は忍者。

関かおりの記事一覧を見る

 2016年10月10日。七崎良輔さん(31)は築地本願寺(東京都中央区)でパートナーの男性との結婚式を挙げた。2人とも羽織袴(はかま)で、披露宴のお色直しには特注のタキシード姿で登場した。「男女のカップルみたいに婚姻届を受理してもらえないから、自分たちの関係は周囲の人に認めてもらうしかないんです」。結婚式を挙げた理由を、七崎さんはそう語る。

 挙式を迎えるまでには、壁もあった。築地本願寺の内装に七崎さんが「一目惚れ」して予約を申し込んだが、一部からゲイのカップルの式を挙げることに反発する声が出た。その結果、許可が出るまで約4カ月を要した。さらに、内容は結婚式なのに、「結婚式」と銘打つことは認められず、「パートナーシップ仏前奉告式」との名前がつけられた。

 ゲストはお互いの親族や友達を合わせて65人ほど。鏡開きをして、友達が余興をやってくれた。息子がゲイであることをなかなか受け入れられず、当日まで出席を渋っていた七崎さんの母親も、祝福してくれた。「2人のことを応援しているからね」。その言葉を聞き「挙式をしてよかった」と心底感じた。

 2人は今、都内で「夫夫(ふうふ)」として一緒に暮らしている。七崎さんは自分の経験を生かし、LGBTカップルの結婚式や公正証書の手続きのサポートをする会社「ジュエリアス」を運営している。ただ、七崎さん夫夫が15年にあえて提出した婚姻届は、やはり受理されなかった。同性婚を巡る一斉提訴は「全力で応援しています。一緒に戦うつもりです」と期待している。

築地本願寺で式を挙げた七崎さん夫夫

 ▽変わり始めた結婚式場

 法的に同性婚が認められない日本では、どれだけ長年連れ添っても、パートナーの位置づけは「友達」。当事者たちの間では「部屋を借りる際に大家に断られてしまった」「緊急性があっても、お互いの手術の同意書にサインができない」「相続で伴侶として認められない」などさまざまなトラブルが発生している。

 現在、同性カップルの間で婚姻届の代替として広まりつつあるのは公正証書だ。関係を明らかにする材料として注目されている。それに加えて、結婚式を通して周囲に伴侶として認めてもらい、婚姻状態に近い形を作ろうとするカップルが徐々に増えている。かつては本人たちのみか、ごく親しい身内だけを招いて挙げるのが一般的だったLGBTの結婚式。現場はここ数年で急速に変わってきている。

 東京都港区にあるJASMACウェディング事業部は、LGBTカップルの挙式を開くゲストハウスを都内で運営している。

 同社の丸江みゆきさんによると、式場はプライベート空間や自由な挙式を売りにしており、16年にたまたまLGBTカップルの挙式の申し込みがあったことから積極的な受け入れを始めたという。

 当時はLGBTの認知度が低く、「他のカップルにいやがられるのでは」と懸念する式場や、トランスジェンダーの人にドレスを貸し出すことに対して抵抗感のある貸衣装店もあった。同社では理解のあるドレスショップとの提携契約を結ぶなど、対応を一歩ずつ進めてきた。

 「新郎新婦」という呼び方や、席順、衣装など、結婚式の現場で「普通」とされていることも、LGBTカップルの式には当てはめられない。憧れのウエディングドレスにはしゃぐレズビアンのカップルや「一生のパートナーだということを式で認めてほしい」と望むゲイのカップル。本人たちの理想の挙式や、抱える事情はそれぞれ違う。丸江さんは「見た目やセクシュアリティだけでは判断できない。当たり前のことを当たり前だと思わないことを心がけている」と話す。

 今では他の式場から「LGBTカップルから挙式の申し込みがあったが、何に気をつけたらいいか」などと相談を持ちかけられることもある。同社では今後、LGBT向けのフォトウエディングのプランを新設するなど、さらに受け入れを広げたい考え。丸江さんは「結婚式は自由でいい。『自分はLGBTだから結婚式なんかどうせ無理だ』と思い込んでいる人に『そんなことないよ』というメッセージを届けられるよう取り組みたい」と意気込む。

 ▽LGBT理解へ、企業向け研修も

 企業向けのダイバーシティ研修を開くレティビー(東京都千代田区)は、LGBTカップルの挙式に対応できるウエディングプランナーを育成する研修も請け負っている。社長の外山雄太さん(28)はゲイ。大学在学中に「同性婚が認められない日本でも、何かできることはないか」と考え、会社を設立した。

 当初は公正証書の手続きや結婚式のサポートなどをしていた。が、式場側と交渉する中で「挙げてほしい気持ちはあるが、どのように対応していいのか分からない」と担当者から悩みを打ち明けられた。

 研修では、当事者の声を基に、「挙式を望むカップルとの打ち合わせで、どのような点を聞き取らないといけないのか」「どこに気をつけないといけないのか」を指導する。トランスジェンダーで名前を変更した人の場合、親がまだ我が子の新しい名前を受け入れられていないケースもあり、気配りが必要。トイレはどうするか。「新郎新婦」という呼び方でいいのか。正解があるわけではなく、本人たちが何を望んでいるのか把握することが求められる。これまで40~50社を対象に研修を開いた。

 現在、同社への依頼はLGBTへの理解を深める企業向けの研修が主だが、今後も要望があればウエディングプランナー向け研修を開く。外山さんは「挙式をするカップルのサポートはもちろん大切だが、『うちは大丈夫』と自信を持って言える式場が増えるのも大事」と話している。(共同通信=関かおり)

 ▽取材を終えて

 本稿を含め、LGBTをテーマにした「U30」企画の取材で、さまざまなセクシュアリティーの方にお話を伺いました。

 七崎さんはゲイであることを自覚したとき、「もう孤独死決定だ」と深く落ち込み、「自分は前世で人をたくさん殺したりとても悪いことをしたりして、苦しんで生きていくことを運命づけられているんだ。これは罰なんだ」と思っていたそうです。

同性婚を違憲とする訴訟の訴状を提出するため、東京地裁に入る原告ら=14日午前

 婚姻という形で法的に守られないLGBTカップルにとって「ただ一緒にいる」ということ自体とても難しいのかもしれません。

 一方で、原稿に入りきらなかったのが本当に惜しいのですが、とても明るい口
ぶりで楽しい話をしてくれる方もたくさんいました。たとえば七崎さんは中学の
同級生の男子と体毛の話をしているときに「まだ毛生えてないの?」と脇を見せられて恋に落ちてしまったそうです。なんじゃそりゃ。

 LGBTの恋愛・結婚・出産を扱った「U30のコンパス+ 性のかたち、ありのままを生きる」ネット版は来週公開予定です。(終わり)