中国企業に買われた「東芝ブランド」その後

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上は中国・南京の家電売り場の美的集団の看板(共同) 下は2017年の東芝・綱川智社長(当時)の記者会見

 日本を代表する白物家電ブランドだった東芝が中国の家電大手「美的集団」に事業を売却したのは2016年6月末だった。2年半の後、不正会計問題で傷ついた東芝ブランドは今、中国企業の経営戦略の中で再生しつつある。その家電を手掛ける「東芝ライフスタイル」社長に2月1日付で就任した小林伸行氏が8日、都内で報道陣に会社の現状を語った。(共同通信=柴田友明) 

 量販店、ネット通販のウェブでも「東芝」のロゴが入った家電製品がパナソニック、三菱電機の製品と並ぶ。「美的」傘下に入ったとはいえ、売却後40年間はブランド名が使えるためだ。 

 「ものづくりのDNAを大切にしてきた」。小林社長は1986年に東芝に入社してから一貫して白物家電を担当してきた自身のプロフィールを語り、東芝発祥のものづくりの精神、そのスタイルを守ってきたことを繰り返し強調した。メディア向け説明資料も1ページ目の企業理念の中で「国内の主要家電製品1号機を世の中に提供」「120年以上に渡り『お客様の目線でモノづくり』を追求」と、従来のブランドイメージの継承を示していた。 

 4ページ目に親会社の美的集団の企業理念や事業方針が書かれていた。「人類のためにステキな暮らしを創る」。中国語を直訳したようなやや硬めの表現を読み上げる小林社長は、翻訳したものと断りながら少し苦笑したように見えた。今年で創立50年となる美的集団を、中国の(体制の)中では珍しく民営から出発して、ここ15年で急速に成長した会社と紹介。「先に話した東芝ライフスタイルの企業理念と『親和性』が高くなった」と述べ、25年以上前から東芝と提携協力関係にあったと付け加えた。

  中国の南部、広東省を拠点とする美的集団は日本人にはまだなじみが薄いが、世界最大規模の家電メーカーだ。家電では1980年代に扇風機から参入したとされる。東芝ライフスタイルが配布した資料では、総売上高が4・1兆円、総資産が4・2兆円(それぞれ2017年度の実績)、従業員は13万5千人。

 一方、川崎市に本社を置く、東芝ライフスタイルはグループ全体で売上高は2620億円、従業員数は約1万2500人なので、親会社は10~20倍超の規模だ。2年半前に東芝本体から売却された時はまさに大が小をのむ構図で8割の株式を握った。 

 美的集団副社長の王建国氏が取締役会長だが、非常勤のため中国本国にいることが多く、東芝ライフスタイルに送り込まれた中国人の常勤役員はわずか1人。東芝ブランドを売るため同社出身者を有効に活用、組織体制だけは親会社風に、主力商品ごとの事業部制をきっちり取り、それぞれの責任体制とスピード化を明確にしたことが功を奏したと業界では言われている。16年度と比べて、18年度の売上高は約1割アップ、業績も好調となった。小林社長も親会社の経営方針に沿って「(よそゴトではなく)自分ゴトの会社風土醸成に取り組んできた」と社員の意識改革について述べている。

東芝ライフスタイル社長に就任した小林伸行氏

 東芝ブランドの復活はある意味、「福音」であるかもしれない。一方で、米国と中国との緊張関係が進めば、現在の親会社、子会社の経営にどのように響くか注目されている。

 小林社長は説明の中で美的集団の名称を呼ぶとき、「びてきしゅうだん」「ミディアグループ」「マイディアグループ」と3通り、時には「彼ら」という言い方をしていることに筆者は気付いた。漢字表記を中国語(北京語)で発音するなら「メイダジートウァン」だが、日本人には分かりにくいのでそう使わないのだろう。日中双方の会社の「間合い」にも気付かされた。

 将来、マイディアグループという発音がもし私たちに極めてなじみのあるモノになっているなら、その時、東芝ブランドがどうなっているのか…大変気になるところだ。