ゴーグルを着け、水面を見つめる。泉田(三菱重工長崎)は何にも考えず、ただただ、集中力を研ぎ澄ませた。1年間の努力を懸けた。すべて、この50メートルに。
水泳肢体男子1部50メートル背泳ぎ(区分18)。昨年、39秒80の大会新で制した種目だ。前日、専門の50メートル自由形(同)は「勢いがつけられなくて」大会記録を更新できなかった。優勝はしたものの、この日の背泳ぎには雪辱の思いも詰まっていた。
レース前、B'zの「ウルトラソウル」を聴いて気持ちを高めた。勝負の号砲が鳴る。先天性による両脚の障害でキックは打てない。思いのほか「体も重かった」。だが、鍛え上げられた上半身の強さで、見せた。後続に23秒49差をつけ、2年連続大会新Vを飾った。
「うれしい」のは間違いない。1年間、きつい練習に耐えて照準を合わせてきた大会での栄冠だ。「でも、本音は自由形も背泳ぎも納得いってない」。記録を更新したといってもわずか0秒18。レース後に見せたのは、ガッツポーズではなく苦笑いだった。
泉田にとって、3歳から始めた水泳は「誇れるもの」。だから、2年連続2冠でも、欲求は簡単には満たされない。「次は全日本」。すでに視線も1週間後の日本選手権へと向いている。
水中は戦いの場であると同時に、一番気持ちのいい場所でもある。「好きだから、ずっと続けている」。物事に臨むときに一番大事な思い。これが、21歳の闘志を燃やし続けている。
(平成26年月11日3日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。
【平成の長崎】長崎がんばらんば大会第2日 水泳 肢体男子1部50背 泉田 2年連続大会新V 平成26(2014)年
- Published
- 2019/02/17 00:00 (JST)
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