新たな観戦の形に―ベイスターズが感じたビジターライブビューイングが秘める可能性

ビジターゲームでのライブビューイング増加を目指すベイスターズの経営・IT戦略部長の林裕幸さん【写真:編集部】

ビジターゲームを横浜スタジアムから盛り上げる新たな応援方法

 球団創設から今年で70周年を迎える横浜DeNAベイスターズ。DeNAが親会社となり1年目の2012年は、本拠地での年間観客動員数は116万5933人だったが、7年目の2018年は202万7922人という大台突破に成功した。この背景には、チームが実力を上げた事実と同時に、横浜の街とともにスポーツを盛り上げていこうという事業側の努力もある。

 特別仕様のユニホームや各種イベントが行われる「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」「YOKOHAMA GIRLS☆FESTIVAL」などの定着に加え、昨季は球界初の試みとして「ホテル横浜ガーデン」とオフィシャルホテル提携を結び、パッケージツアー付き宿泊プランを販売するなど、絶えず新たな挑戦に取り組んできた。さまざまな新事業の仕掛け人の1人でもある経営・IT戦略部長の林裕幸さんによると、オフィシャルホテルの利用は当初、地方に住むファンの利用を想定していたが、「実際は横浜や神奈川に住むファンの方にも多く利用していただきましたね」という。

 想定外の好反響を得たという点では、昨年初めて行われた「ビジターゲームBAYライブビューイング」も同じだ。それまでクライマックスシリーズ(CS)や日本シリーズでは行われていたライブビューイングだが、シーズン中にビジターでの試合を横浜スタジアム内で放映したのは昨年が初。その時の盛り上がりを、林さんはこう振り返る。

「実施したのは9月11日から13日までの広島戦でしたが、チームがどこにいても、ファンの皆さんが応援したいと思う気持ちは一緒。横浜スタジアムから広島に向かって、大きな声援を送っていました。生観戦ではなくても横浜スタジアムでライブ中継を見ながら、他のファンの皆さんと一緒にチームを大いに盛り上げる。これはまた、新しい観戦の形なのかもしれません」

「横浜スポーツタウン構想」を具現化するDeNAベイスターズは、横浜や神奈川といった地域に密着した球団・球場の在り方を目指す。地域の住民が気軽に立ち寄れるライブビューイングは、格好の橋渡し役となりそうだ。

球団創設8年目を迎えて感じる“地域とともに盛り上がる流れ”

 横浜出身で野球少年だったという林さんは、ベイスターズを身近に感じながら育ってきたという。「育ててもらった恩返しがしたい」と一念発起。コンサルタント系の前職を離れ、球界に新たな風を吹かすDeNAベイスターズに入社した。既存の枠に囚われず、「野球」というコンテンツが持つ可能性を最大限に生かしながら、横浜スタジアムを中心とした地域を持ち上げたい。球団内に共通する思いは、徐々に地域にも浸透し始めているようだ。

「地域の方々も非常に協力的ですね。横浜は開港の街ということもあり、新しいものに対して寛容なのかもしれません。昨年8月10?12日に開催された『勝祭(かっさい)』では、週末の2日間、球場に隣接する日本大通りを封鎖してライブステージや飲食・物販エリアが展開されましたが、この時も非常にポジティブな反応をいただきました。

 DeNAベイスターズとなって今年で8年目ですが、1、2年目よりも『何か面白いことをしてくれるだろう』と期待していただけるようになったと感じます。街も市民も一緒になって盛り上がっていける。そういう流れが徐々に生まれつつあるのかなと」

 今後もファン、そして球界をアッと驚かせるような仕掛けをしていく予定だが、まずは昨年反響を呼んだビジターゲームのライブビューイングを増やしていきたいという。

「僕の理想は、横浜スタジアムが常に盛り上がっていることなんです。プロ野球はレギュラーシーズンが143試合あって、ホームゲームは71か72試合。チームが遠征時はコンサートやイベントが行われることもありますが、できればビジターゲームのライブビューイング開催数を増やしたいですね。春先だったり、休日のデーゲームだったり、ファンの方が集まりやすい時期に開催できたらと思います。

 もう1つ、横浜スタジアムに観戦にやってきた方々に、球場やその周辺地域で少しでも長く時間を過ごしていただける努力もしていきたいですね。単に野球を見て帰るだけなら、おそらく滞在時間は3時間くらい。ですが、試合が始まる前や終わった後に、少しでも長くとどまっていたいと思える環境作りが必要だと思います。それは新たなイベントを行うことかもしれないし、球場のある横浜公園の活用の仕方かもしれない。これからも恐れず、新たな取り組みにチャレンジしていきたいですね」

 2019年、DeNAベイスターズがどんな仕掛けをしてくるのか。ファンならずとも見逃せなさそうだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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