初のGT500に挑む中山雄一に聞く2019年への意気込み「シーズンに向けポジティブな気持ち」

 2月7日、トヨタ自動車は2019年のモータースポーツ活動計画について発表し、スーパーGT GT500クラスに参戦するドライバーラインアップを公開した。LEXUS TEAM SARDは今季、ヘイキ・コバライネンのパートナーとして中山雄一を起用することになったが、GT500初参戦となった中山に、その意気込みを聞いた。

 中山はカートコースを運営する父の影響もあり、幼少期からカートに挑み2008年に四輪にステップアップ。2011年からは全日本F3選手権に参戦し、2013年にはチャンピオンを獲得した。その前年の2012年にはaprからスーパーGT GT300クラスにスポット参戦している。

 2014年から16年まではスーパーフォーミュラに参戦する一方、スーパーGTでは2015年からaprのトヨタ・プリウスGTを駆りフル参戦を開始。2017年からはLM corsa/K-tunes racing LM corsaに移籍し、これまで7勝。毎年のようにタイトル争いに絡んでいる。

 意外に思われる人も多いかもしれないが、中山はGT500フル参戦はLEXUS TEAM SARDに加入して迎える2019年が初だ。「GT500自体は3年くらい前にマレーシアでのテストに参加したときにドライブしたのですが、そのときはレギュラーになれるほどのパフォーマンスを示すことができず、チャンスを掴めませんでした」と中山。今年は目標を叶えたことになる。

 フル参戦となる2019年に向けて、中山は2018年12月にマレーシアのセパンサーキットで行われたテストに参加。「どちらかといえば不安も大きいなかで向かいましたが、それほどプレッシャーがかからないようにテストさせてもらえました」とパフォーマンスを出すことに成功した。

 こうしてつかんだGT500のシートだが、セパンテストではほとんど経験がないコースだったにも関わらず、レギュラーで乗っていたドライバーたちのコンマ5秒落ち、さらに1月に富士で行われたテストでは、「ニュータイヤでもコンマ1秒差ないくらいで走れていた」という。

「GT500で戦うという意味では、今のところうまく走れていると思います。シーズンに向けて、今のところポジティブな気持ちですね」と中山は自信をみせた。

スーパーGT第3戦鈴鹿、GT300のポールポジションを獲得したK-tunes RC F GT3
2016年までKCMGからスーパーフォーミュラに参戦していた中山雄一

■コバライネンとの関係も良好。その秘訣は趣味!?

 GT500デビューイヤーに向けて、相方となるのは2016年のGT500チャンピオンで、F1での優勝経験ももつヘイキ・コバライネンだ。スーパーGTでの戦いも2019年で5年目。すでに多くの経験をもち、LEXUS TEAM SARDにとっても不動のエースの印象も強い。「言わずと知れた元F1ドライバーですし、レーシングドライバーとしてのレベルはすごく高いです」と中山はコバライネンについて語った。

「これまで3回テストしているなかで関係はいいですし、僕に足りない部分があると積極的にアドバイスをしてくれています。みんなでパフォーマンスを出し合って戦っていこう……という姿勢が、チームにいい影響を与えるドライバーだと思います。僕もそのなかにうまく溶けこんで、チームの雰囲気をもっと良くしていきたいですね」

 スーパーGTでの戦いのなかで、中山は外国人ドライバーと組むのも初めて。英語でのコミュニケーションに不安はないのだろうか……? と聞いてみると、「趣味が合うんです(笑)」という。

「ゴルフが共通の趣味なんですよ。サーキット以外ではゴルフの話ばかりしていて、そういった点もコミュニケーションを深めるツールとして役立っています。(ゴルフ好きで)良かったです(笑)」

 英語も「問題はまったくないです」と中山。コバライネンも中山も、マシンを下りれば人柄としては温和なキャラクター。チームとしても“やりやすい”ドライバーなのは間違いないだろう。

■「一年間しっかり戦うことが重要」

 とはいえ、もちろんGT500参戦にあたっては中山に課題も多いのは間違いない。GT500の勝敗を左右するGT300との戦い方だ。

「“GT500を抜かせる”のはすごく自信がありますが(笑)、“GT300を抜いていく”というのが僕のなかではまだ未知数です」と中山も認める。

「そこは開幕までに公式テストでしっかり勉強しなければなりません。まずは“場数”をこなさないといけないですね。でも、最後までしっかり戦ってゴールするということをやっていけば、自ずと結果はついてくるのではないでしょうか」

 ちなみに、GT300で戦ってきた中山にとって、GT500をドライブすることで気付いたこともあったという。

「GT500はパフォーマンスがすごく高いですけど、コーナーによってはかなり難しい部分もあるんです。クルマの剛性が足りなかったりするので、そこはうまく乗りこなさないといけないです。そのなかでGT300もパスしないといけないですからね」と中山。

「GT300で戦っているときは、GT500に抜かれたときに『もうちょっと早く行ってよ!』とか『そこでなんでそんな動きになるの?』と思っていたこともあったのですが、GT500に乗ってみて良く分かりました(笑)」

 もともとフォーミュラで戦ってきた中山にとって、GT500は乗りこなすだけならばそこまで難しいものではないだろう。またタイヤについても、GT300で長年ブリヂストンを使っていた“強み”がある。

「初めてGT500をテストしてから3年、結果は出なかったかもしれませんが、スーパーフォーミュラも戦って、GT300や他のレースにも出ましたし、一戦一戦持ち味を出してきて、トヨタさん、TRDさんにアピールしてきたのが評価されたのだと思っています。すごく嬉しいですね」と今の心境を語る中山。

「スーパーGTは毎戦勝てるわけではないですし、持てるパッケージのなかでベストを尽くすというところはGT300も一緒なので、レースに臨む気持ちは変わらないです。もちろん順位がいい方がいいですけど、一年間しっかり戦うことが重要だと思っています」

 GT300では多くの実績を残してきた中山。初めてのGT500でどんなシーズンを送ってくれるのだろうか……? 今季のスーパーGTでの注目のドライバーのひとりだろう。

岡山国際サーキットでDENSO KOBELCO SARD LC500をドライブする中山雄一
ヘイキ・コバライネンと中山雄一

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