鷹・今宮が川相昌弘の世界記録を“猛追”…今季達成が予想される記録【犠打編】

ソフトバンク・今宮健太【写真:藤浦一都】

史上7人目の300犠打達成はロッテ細川? ホークス今宮?

 走者をバントで送る犠打は、野球のスタイルが大きく変化しつつあるNPBで、変わらず用いられている戦術だ。

 半世紀前の1969年は1試合あたりのバント数を見ると、パが0.57、セが0.54だった。それに対し、2018年はパが0.63、セが0.67と、わずかではあるが増加している。投打ともに大きくスタイルが変化しつつも、日本のプロ野球では今も昔も犠打を多用している。

○NPBの通算犠打数10傑 ※()内は実働期間、現役は所属チーム記載

1川相昌弘 533犠打(1983-2006)
2平野謙 451犠打(1978-1996)
3宮本慎也 408犠打(1995-2013)
4伊東勤 305犠打(1982-2003)
5田中浩康 302犠打(2005-2018)
6新井宏昌 300犠打(1975-1992)
7細川亨(ロ)294犠打(2002-)
8金子誠 292犠打(1994-2014)
8今宮健太(ソ)292犠打(2010-)
10石井琢朗 289犠打(1989-2012)

 犠打が多いのは2番や8番、9番を打つことが多い「つなぐ打者」と、捕手だ。1位の川相は2003年8月に通算513犠打を記録し、MLB記録のエディ・コリンズ(512犠打)を抜いたと報道されたが、当時のコリンズの記録には犠飛も含まれているので、川相はこれ以前に世界記録に達していたと考えられている。

 現役では今季からロッテに移籍した細川と、ソフトバンクの今宮がランクインしている。

 犠打は、NPBでは200犠打から50刻みで表彰される。上記ランキングに含まれる2人も含めて、改めて現役選手の今季の犠打記録達成予報をしよう。

○300犠打(過去6人)
細川亨(ロ)294犠打(2002-)あと6犠打
今宮健太(ソ)292犠打(2010-)あと8犠打
菊池涼介(広)250犠打(2012-)あと50犠打

 今季、楽天からロッテに移籍した細川は、ソフトバンク時代の2011年に34犠打を記録したことがあり、成功率も高い。1月に39歳になったが、試合出場さえすればクリアの可能性もあるだろう。

 ソフトバンクの今宮は過去4回リーグ最多犠打を記録。キャリアハイは2013、14年の62犠打。これは1シーズンの犠打数では歴代3位タイ。昨年は故障もあり、22犠打にとどまったが、300犠打は通過点だろう。まだ27歳と若く、川相昌弘のNPB記録に迫る可能性もある。

 広島の菊池は、昨年まで4年連続セの最多犠打を記録。昨年は30犠打だったが、2013年には50犠打を記録しているだけに、一気に大台クリアの可能性もある。

今季250犠打に一番乗りは中島卓也か…

○250犠打(過去20人)
大引啓次(ヤ)230犠打(2007-)あと20犠打
藤田一也(楽)228犠打(2005-)あと22犠打
中島卓也(日)215犠打(2009-)あと35犠打
嶋基宏(楽)202犠打(2007-)あと48犠打

 いぶし銀の選手が揃った。ヤクルトの大引は出場試合数が減り、昨年は3犠打だったが、オリックス時代の2011年には42犠打を記録したこともある。

 楽天の藤田は、2014年にキャリアハイの41犠打。昨年は17犠打だが失敗は0。技術は衰えていない。

 中島卓也は2016年に歴代3位タイの62犠打を記録したこともある。この4人の中では一番若く、真っ先にテープを切る可能性もあるだろう。

 楽天のチームリーダー嶋は、ここまで1年平均16.8犠打を記録しているが、250の節目まで残り48犠打。今季の達成は難しいか。

○200犠打(過去42人)
炭谷銀仁朗(巨)196犠打(2006-)あと4犠打
安達了一(オ)186犠打(2012-)あと14犠打
渡辺直人(楽)183犠打(2007-)あと17犠打
田中賢介(日)177犠打(2000-)あと23犠打
鶴岡慎也(日)174犠打(2003-)あと26犠打
大和(De)170犠打(2006-)あと30犠打
石川雄洋(De)156犠打(2005-)あと44犠打
山崎勝己(オ)153犠打(2001-)あと47犠打

 今季、巨人に移籍した炭谷は200犠打にあと「4」と迫っている。楽天の渡辺は松坂世代。昨年はわずか2犠打だった。日本ハム田中は2007年に歴代8位タイの58犠打を記録しているが、昨年は1犠打。今季限りで引退を表明しており、達成は厳しそうだ。

 犠打は地味な記録だが、「つなぐ打者」「捕手」など、打撃では日の当たらない脇役的な選手の存在意義を示す重要な指標なのだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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