[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.28 高まるドローンプログラミングの重要性

ドローンプログラミングの重要性

ドローンの業務活用が実証実験段階から社会実装が進んでいくにつれ、より業務に適したかたちでの利用が求められており、ドローンプログラミングの重要性が高まっている。

ドローンプログラミングとフライトコントローラ

ドローンプログラミングに関しては、ドローンの心臓部であるフライトコントローラに依存しており、DJI系とオープンソース系に大別される。DJI系はDJIがSDK(Software Development Kit)という開発者向けの開発キットを提供しており、オープンソース系は機体制御を担うフライトコードのソースが開示されている。

ドローンのプログラミング内容

ドローンを活用するためのソフトウェアの開発は、機体制御・機体管理・情報処理に分かれ、その各要素においてプログラミングがされる。

機体制御は、より複雑な動きを制御するための「高度な自律処理」と搭載するカメラなどを管理・制御するための「ペイロード管理・処理」に分かれる。機体管理は各々それが処理されるエリアにおいて「クラウド」「iOS・Android」「Windows」に分かれる。取得した情報処理を行う場合、そのソリューションに応じて「クラウド」「アプリケーション」に分かれる。その各レイヤーに関しての具体的な内容は次のようなものだ。

DJI SDK

DJI SDKはDJIの機体もしくはフライトコントローラを使って、開発するための開発キットである。DJI SDKはDJI Developerサイトにて情報提供されている(英語のみ)。

DJI SDKはDJI機体もしくはDJIフライトコントローラの安定的な機体制御技術を使って、より高度な自律処理やペイロード管理・制御、機体管理のアプリケーションの開発を支援するものだ。DJI SDKは現在、次の5つのSDKが提供されている。

そして、このSDKはおおむね次の役割となっている。

「Onboard SDK」 シリアル接続により直接DJIフライトコントローラと通信。インテリジェントナビゲーションモードを使用することで、自律的な飛行経路と操縦を作成して、オンボードAPI機能で、ドローンの飛行を監視および制御することが可能。

「Payload SDK」 サードパーティのメーカーがDJIのフライトプラットフォームとシームレスに固有のペイロードを開発できる。ペイロード側から、電源・ワイヤレス通信リンク・機体の状態やステータス情報などにアクセス可能に。

「Onboard SDK」と「Payload SDK」はDJIの汎用機体ではなく、開発用のMatrice100、200、600およびDJI A3フライトコントローラでの開発が条件となっている。 「Mobile SDK」 フライトコントローラと通信可能なモバイルアプリを開発して、プラットフォームの可能性を最大限に引き出すことが可能。

「UX SDK」 Mobile SDKをよりユーザーインターフェイスに限って、すべてのコア機能のUI要素を提供することで開発時間を短縮。 追加のコード行なしで数分でアプリケーションを作成可能に。

「Windows SDK」 今秋に提供予定をしているものだが、Mobile SDKと同様に、DJIプラットフォームの可能性を最大限に引き出すためのカスタマイズされたアプリケーションをWindows環境で作成可能にする。

「Mobile SDK」「UX SDK」「Windows SDK」は、Phantom、Mavic、InspireといったDJIの汎用機体を活用する開発が可能だ。

ドローンの開発実践例

現在、ドローンは土木現場の3次元化や農地の植生指数化に使われている。

こういった活用の現場ではまだまだ使いやすくするための工夫が求められている。また、DJIは、「Public Safety」と言われるような警察官や消防士といった業務を行う各人一人一人にドローンを携帯させることを戦略のプライオリティを置いている。

これは、各現場(事故、事件、火災など)における状況管理や犯人追跡等に活用していくという内容だ。こういったドローンの業務におけるパーソナル化といった流れは、様々な業務に展開されていく可能性がある。それは、フィールドで作業する人たち、山林状況把握のための木こり、害獣対策のためのハンター、進捗状況把握のための土木作業員、屋根点検のための点検作業者、災害現場の救難作業員など、多くの業務が想定される。

業務に適した自動飛行を行うためのアプリケーションやフィールドで情報処理するためのアプリケーション、その情報を蓄積し解析していくためのクラウドサービス、個々の端末を管理するためのサービス、そして、データセキュリティなどが必要となってくる。これは業務でのPCが一人一台となり、それがサーバーにつながり高度な処理や管理がされ、また、それがクラウドに拡がっていった流れと似た動きで、既存のIT企業にとっても大きなビジネスチャンスとなる動きとなるだろう。

このたび、日本で初めてのドローンプログラミングの書籍が出版された。 「ドローンプログラミング アプリ開発から機体制御まで DJI SDK対応」でここに記したDJI SDKに関して、より詳細に記したものである。 ドローンのプログラミングに興味ある人はぜひ手にとってみてほしい。

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