映画『女王陛下のお気に入り』- 女性の愛憎劇だけで済ますことはできない、現代にも当てはまる18世紀初頭の物語

女性の愛憎劇だけで済ますことはできない、現代にも当てはまる18世紀初頭の物語

第91回アカデミー賞最多タイ10ノミネートされている『女王陛下のお気に入り』。

主演女優賞にオリヴィア・コールマン、助演女優賞にエマ・ストーンとレイチェル・ワイズと、3女優がノミネートされているのだから、どれほどの愛憎劇が繰り広げられているかわかるだろう。この映画、アン王女と彼女に仕える2人の女性が火花を散らす愛憎劇なのだ。

18世紀初頭、フランスと交戦中のイングランド。そのトップはアン王女。しかしアン王女、政治的センスはゼロだし興味もない。17匹のウサギを可愛がり、わがままばかり言い、贅沢三昧で肥満、痛風まで患う。政治的イニシアチブを握るのはアン王女の幼馴染のレディ・サラ。そこに、家が没落し召使に雇ってもらおうと現れたアビゲイル。虎視眈々とアン王女の寵愛とレディ・サラの持つ権力を奪い取ろうとする。そうはさせまいとレディ・サラ。さらにわがままになっていくアン王女。

「女って怖いな」と思うだろうがちょっと待って。確かにこの映画、国のトップも権力の座を争っているのも女性。でも逆の映画、男性が権力の座を争う映画はいくらでもある。「女って怖いな」と思ったとしたら、それはそのまま「男って怖いな」だし、脇役の男性は、これまでの多くの「男性映画」の女性の姿なのだ。

3女優の体当たりの競演が素晴らしい。特にアン王女のオリヴィア・コールマンの、国のトップという重圧だけが圧し掛かるが(その象徴が17匹のウサギ)、誰からも信頼などされていないと悟った表情が、凄い。必見。

宮廷の中の愛憎劇に笑ったり恐れたり目を奪われていくのだが、外の世界は戦争中だと気づいた時、ゾッとする。18世紀初頭の話は現代にも当てはまるんじゃないか?

アカデミー賞には監督賞、脚本賞などもノミネートされているのも納得だし、衣装デザイン賞、撮影賞のノミネートも深く納得。美しく本当に見事。

つまりは『女王陛下のお気に入り』、女性の愛憎劇だけで済ますことはできない、見応えある映画なのだ。(遠藤妙子)

映画『女王陛下のお気に入り』

【監督】ヨルゴス・ランティモス(『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』)

【キャスト】エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、オリヴィア・コールマン、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィン

2018年 / アイルランド・アメリカ・イギリス映画

©︎ 2018 Twentieth Century Fox

【配給】20世紀フォックス映画

2019年2月15日(金)より全国ロードショー

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