事業再生ADR申請の曙ブレーキ工業(株)177億円の最終赤字、初のGC注記

 1月29日、事業再生ADRを申請した東証1部上場の曙ブレーキ工業(株)(TSR企業コード:290001102)は2月12日、2019年3月期決算第3四半期決算を発表した。
 売上高は連結ベースで1,862億9,500万円(前年同期比7.1%減)に対し、営業利益は23億2,400万円(同64.3%減)の黒字を確保した。しかし、米国メーカーの乗用車生産からの撤退や生産混乱から次期モデル用ブレーキ製品の受注を逃すなどで、北米事業が不振に陥り多額の減損損失を計上。最終四半期赤字は177億4,800万円に膨らんだ。
 同期連結決算では自己資本比率が4.6%(2018年3月期は14.0%)と大幅に低下した。株主資本が49億6,500万円のマイナスとなったことで、財務制限条項に抵触。一部の銀行借入の約定弁済が困難となり、初めて「継続企業の前提に関する注記」(GC注記)が記載された。
 2019年3月期決算(通期)は、前回予想では連結ベースで20億円の最終黒字を予想していたが、一転して192億円の最終赤字に下方修正した。連結売上高の半分(1,175億円)を占める北米地域で、営業損失が39億円に拡大する(前回予想はゼロ)見込みだ。

第1回債権者会議は成立・同意

 曙ブレーキ工業は2月12日、事業再生ADR手続きの第1回目の債権者会議(事業再生計画案の概要説明)を開催した。会議で取引金融機関(約30行)に事業再生計画案の概要を説明。すべての取引金融機関から支払停止の同意を得た。また、同日付で主要取引金融機関とDIPファイナンスによる借入を含めた資金支援を受けることについて契約を締結したとしている。
 資金支援の内容について曙ブレーキ工業の担当者は、「契約先の金融機関名やDIPファイナンスの額、規模感の回答はできない」とコメントした。
 今後、第2 回債権者会議(協議、4月8日予定)及び、第3回債権者会議(決議、6月11日予定)を開き、全取引金融機関の同意による事業再生ADRの成立を目指すという。
 曙ブレーキ工業は東京商工リサーチ(TSR)の取材に、「事業再生ADRの特性上、リリース以上の情報開示は厳しく制限されている。開示すべき事項があれば逐次発表するが、事業再生ADR手続きは予定通り順調に進んでいる」(広報担当者)とコメントした。

 地元金融機関の武蔵野銀行は、1月30日に曙ブレーキ工業の事業再生ADR申請を受け、貸付金70億円の取立不能又は取立遅延のおそれが生じたとして全額引当処理することを発表した。成立にはすべての金融機関の同意が不可欠で、足並みが揃うか注目される。
 同時に、事業面では取引先などの協力も欠かせない。スポンサーとして取り沙汰される筆頭株主のトヨタ自動車のほか、第2位のいすゞ自動車、第4位のアイシン精機など、国内屈指の自動車関連メーカーが株主に名を連ねている。これらの企業を筆頭に、国内外の自動車関連メーカーが当社の苦境にどう動くか、その動向も見逃せない。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年2月14日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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