『半世界』 男3人の友情の描き方は、さすが

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 阪本順治のフィルモグラフィーには『顔』『魂萌え!』など女性主人公の作品もあるけれども、『どついたるねん』で監督デビューした彼の作家性は、やはり“男臭さ”と言えるだろう。そんな彼が、前作『エルネスト もう一人のゲバラ』から一転、地方都市に暮らす39歳の男の友情と家族問題を自身のオリジナル脚本で描いた今回は、ドメスティックな分だけ、彼らしさが際立っているように思う。

 主人公は、父の仕事を継いだ炭焼き職人。家のことは妻に任せっぱなしだったが、突然帰郷した元自衛官の親友や、もう一人の親友との交流を通じて、真剣に家族や仕事と向き合い始める。もちろん、3人の友情の描き方はさすがなのだが、監督自身が年齢や作品を重ねたことで、そこに人生の滋味が加わった。稚気と大人の包容力が混然一体となった3人の人物像と関係性が生々しく、三重でのオールロケ撮影もそこに一役買っている。と同時に、雨の中の葬儀シーンなど映画としてのたたずまいも相変わらず見事だ。

 劇中に「こっちも世界」という印象的なセリフがあるが、それは、スケール感のある映画でなくても、市井の小さな営みを扱ったこういう作品だって映画、「こっちも映画」だという決意表明だろうか? 監督が自分自身に言い聞かせているように、そのセリフが響いてきた。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:阪本順治

出演:稲垣吾郎、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦

2月15日(金)から全国公開

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