「気候非常事態宣言」世界の地方議会で急増、300超に

2016年6月23日、オーストラリアのメルボルンの日刊紙『ジ・エイジ』に掲載された意見広告 © Climate Emergency Declaration

世界で地方議会による「気候非常事態宣言」運動が急速に広がり、その数は300を超えた。気候変動や異常気象が急速に進む中で、地方議会ごとにその危機的状況を共有し、「カーボンゼロ」などの目標を急ぐ。2016年にオーストラリアで始まり、英語圏の米英カナダに拡大、そのカバー人口は2500万人に上った。今後もその数は増えそうで、各国政府による非常事態宣言もあり得る状況になってきた。(クローディアー真理)

「気候非常事態宣言」とは、地球温暖化が人間と自然環境を危機的状況に追い込んでいると行政が認識し、問題解決の手立てを早急に講じる計画であることを市民に伝えるために行う。「宣言」という形をとることで、行政側が気候変動を事実と認めていることを公に示し、市民にその危険性を周知徹底させようという意図がある。

気候非常事態宣言のキャンペーンとして、オーストラリア―フランス間をカヤックで往復したスティーブ・ポッセルト氏(前列右から6人目)を囲んで © Climate Emergency Declaration

宣言運動を展開しているのは、センター・フォー・クライメート・セーフティ、クライメート・エマージェンシー・デクラレーション・アンド・モービリゼーション・イン・アクション(CEDAMIA)など、宣言を推進しようとする、オーストラリアの専門団体だ。

宣言するにあたって求められるのは、まず現行のエネルギー政策の見直しを行い、カーボンゼロを目指す政策に切り替え、実行することだ。これには、過去に排出したCO2の削減への対応も含まれる。そして専門家の意見を取り入れながら気候変動を増幅させるような新たな投資を行わないよう法律を策定する。施策に特化した組織を結成すること、市民への教育を行うことなども挙げられる。

各国政府が効果的な気候温暖化対策を実施できていない現在、地方議会の役割は重要だ。地方議会主導で行動を起こし、中央政府を含めたほかの政府関係機関に温暖化対策の迅速な強化と実現を呼びかけていく。

温暖化による海水温度の上昇が一因とされるサンゴの白化 © Howard Hall/Coral Reef Image Bank

気候非常事態への対応を目指す地方議会を支援する、オーストラリアの団体、コミュニティ・アクション・イン・ザ・クライメート・エマージェンシー(CACE)のブリオニー・エドワーズ代表は「世界の地方議会は温暖化に起因する非常事態をもはや見過ごすことはできずにいる。地方議会が、関連のNGOはもとより、各国政府を先導していくだろう」とコメントしている。

英国の大ロンドン庁や、カナダのバンクーバー市などの大都市も宣言を行っている。また米国のロサンゼルス市は、宣言こそ行っていないものの、昨年気候非常事態対策を専門に監督する、クライメート・エマージェンシー・モービリゼーション・デパートメントという部署を設けることを可決している。

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