1月、チェルシーにゴンサロ・イグアインがやって来たけれど、どうなんだろうね。ハダースフィールド戦で2ゴールを決めたとはいえ、この相手はプレミアリーグで闘える戦力を持っていないから、イグアインの力を計る試合とはいえない。案の定、続くマンチェスター・シティ戦は沈黙したでしょ。まぁ、冬の移籍で即フィットしろっていうのは酷なリクエストだ。イグアインの評価は、来シーズンまで待つことにしよう。
でも、チェルシーの人事って不思議だよ。ボルシア・ドルトムントからクリスティアン・プリシッチを獲得したのに、なぜローンバックしたのか……。もう、布石ですよ、「フ・セ・キ」。今シーズン終了後、エデン・アザールがレアル・マドリードに移籍するのはほぼ間違いない。本人もエル・ブランコに対する憧れを隠していないし、複数のメディアを通じて「チェルシーは今シーズン限り」とにおわせている。マウリツィオ・サッリ監督も慰留するつもりはないようだ。
「残ってほしいけれど、移籍したいのであれば仕方がない」
しかもサッリは、「エースと呼べるほどの活躍はしていない」と、公の席でアザールを批判した。敗れると必ず、子飼いのジョルジーニョを除く選手の姿勢に首を傾げる。「モチベーションが低い」。身内の不満を外に漏らすなんて、現場の長にあるまじき行為だ。
まぁ、チェルシーらしいっていえばそれまでだけどね。かつてジョゼ・モウリーニョも、アンドレ・ビラス・ボアスも、そしてアントニオ・コンテも同じ罪を犯している。要するにサッリも悪しき伝統を受け継いだ……ってことは、チャンピオンズリーグ(以下CL)の出場権を獲得できなかった場合、いやいや終盤戦のパフォーマンスがさらに低下すれば……。ひょっとするとマンチェスター・シティ戦の0-6が引き金になり、サッリは解雇されるかもしれないよ。オーナーのロマン・アブラモビッチは辛抱できないからさ。
でも、監督に全責任を押し付けるのはアンフェアだ。昨シーズン、CLの出場権を失いながら、今シーズンの上積みがジョルジーニョ、マテオ・コバチッチ、ケパ・アリサバラガではインパクトに欠ける。今冬も構想外のガリー・ケイヒル、ダニー・ドリンクウォーター、ロバート・グリーン、ルーカス・ピアソンを換金できなかった。ホームグロウン制度の定数(8名)が関係しているんだろうけれど、グリーンは峠を越えたGKだし、ピアソンはローンの連続でしょ。上層部は何をやっているんだ!?
監督をコロコロ代えたり、不要な選手に週給を払ったり、おかしくないか。最大の強みだった経済力でもシティに劣るのだから、これまでの手法は通用しない。スタジアムのリニューアル計画も頓挫したことだし、チェルシーはチーム作りを改めた方がいいね。
文/粕谷秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。