<ブレーク盤> 杏沙子『フェルマータ』 聴いていると自然に笑顔になる爽快感

杏沙子『フェルマータ』

 94年鳥取県出身の女性シンガーソングライターの1stフルアルバム。“自分の音楽を自由に延ばしたい”という意味の込められたタイトル通り、音楽で楽しみたいという気持ちが溢れている。

 全11曲、aiko風のワクワク感いっぱいのラブソング『アップルティー』から、大好きな気持ちを分かってもらえず地団太を踏むファンキーな『ダンスダンスダンス』は岡村靖幸にも通じる。ラストのバラード『とっとりのうた』も故郷愛に満ちていて人間味もある。

 また、メジャーデビュー後、自作にこだわらず他の作家からの提供作も歌っているのも大きな強みだ。特に、幕須介人から提供された『着ぐるみ』などの3曲は、どれも流麗で爽快感が広がる。彼女の歌の上手さもよく分かるし、聴いていると自然に笑顔になるほどだ。

 リングノート風のパッケージや、CDのスリーブケースのイラストも、本作の“びっくり箱”テイストを増幅している。本作を聴けば、人と協力しあうことでまだ見ぬ世界へ飛び出してみたくなるはず。

(ビクター・ぐるぐるリングノートデラックス盤 3200円+税)=臼井孝

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