「野球を嫌いにさせちゃいかん」―香川の女子中学野球チームを率いる指導者たち

「ダイヤのA」作者である寺嶋裕二さんのイラストが描かれている練習着を着る選手たち【写真:大森雄貴】

2014年に結成した中学女子軟式野球チーム「香川オリーブガールズJHC」

 女子野球では女子プロ野球の誕生から、高校野球でも競技人口が増加の一途をたどっている。野球が盛んな四国の香川県にも野球女子が集うチームがある。それが香川オリーブガールズJHC(Junior Highschool Club)だ。

 香川オリーブガールズJHCとは、香川県全域に住む女子中学生を対象とした軟式野球クラブチーム。「野球をやりたい!」と望む女子中学生が土日を中心に活動している。

 所属する選手たちは、各自が学校の部活動に所属している。男子と混じり、中学野球部に属する女子も珍しくない。他にもソフトボール部で県選抜レベルの選手、陸上部、カヌー部など、様々な活動をしている選手が集まる。

 関東ではクラブチームなどの中学部が存在するところもあるが、香川オリーブガールズJHCは県内唯一の合同女子野球チームのため、広い香川県全土から親の送り迎えの協力のもと、通っている。彼女たちが練習に全員が揃うことは少ない。集合時間も設けてはいるが、遅れてくることもよくある。県内でチームはないため、練習試合はほとんど組めないのが現状だ。

 チームは2014年に代表を務める宮武正弘氏が、小学生の女子学童野球クラブチーム「香川オリーブガールズ」の卒業生を中心に結成。宮武氏は、四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズとも交流があり、名を香川オリーブガールズJHCとして、中学の女子軟式野球チームがスタートさせた。

「ただでさえ、非常に少ない競技人口、野球を嫌いにさせちゃいかんでしょ」

 2018年秋から監督を務める板倉氏は、これまで6年間を娘とともに小学校の“少年野球”に携わってきた。女子野球に触れることで、野球観が大きく変わった。

「ただでさえ、非常に少ない競技人口、野球を嫌いにさせちゃいかんでしょ」

 少年野球の監督をしていた頃は、厳しい指導もしてきた。しかし、女子野球に携わり、県外の強豪チームの指導を見る中で、気付く点があった。

「男子は怒って聞かせたり、強く言ったりはあっても、女子には逆効果。他県の女性指導者らを見ても、やる気にさせるというか、モチベーションを上げる指導をする」

 野球女子には次なるステップとなる高校でも、進学事情が伴う。現在、中学2年生の娘が選手として在籍し、小豆島から往復4時間かけて練習に通う真砂会長兼コーチは「娘は高校で硬式野球をやりたいという。しかし、香川県内に女子硬式野球部を持つ学校はない。当然、やらせたいが、私学となれば費用との相談となってしまう。各学校に関する情報も豊富ではないし……」と困惑する。

 四国では、隣県の高知県など県外には女子硬式野球部が存在するが、私立であれば高額な学費もかかり、男子野球に比べて越境入学への理解もまだまだである。理想は県内に女子硬式野球部ができることだが、人口減少が顕著な中、簡単な話ではない。OGには、野球をしたいが、悩んだ末、ソフトボールに進路をとる選手も多い。

 真砂会長兼コーチは、チームのHP作成やFacebook及びインスタグラムの担当も務めている。「活動を認知させることももちろんだが、“女子野球”という入り口をネットからも広めていきたい」と語る。香川オリーブガールズJHCは、合同チームのため、人が集まらない限りチームは存続しない。女子野球チームの存在を知らせること、楽しく活動していることをSNSなどで、伝え、開かれた門となっている。

 彼女たちのピンクの練習着の背中には、漫画「ダイヤのA」作者であり、香川県出身の寺嶋裕二氏がイラストを描いている。“野球をしたい”女子たちが、より一層キラキラ輝けることを願う。(大森雄貴 / Yuki Omori)

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