MotoGP:ペトルッチ、走らせ方が完璧なのはマルケス。「常に可能性と限界を超えている」【インタビュー後編】

 2019年シーズンからドゥカティのファクトリーチームに加入したダニロ・ペトルッチのインタビュー後編。共通ECU導入、ミシュランタイヤへのスイッチ等、技術上の多くの変更を経験し、最高峰7年目でファクトリーチームのシートを手にしたペトルッチ。後編でも7年間のマシン・乗り方の変化について語る。

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Q:映像を分析してライディングポディションを比較したりする? 君はどれくらいハングオフをするんだい?

ダニロ・ペトルッチ(以下ペトルッチ):僕は身長が高いライダーだから、体を大きく傾ける。だから、他のライダーよりもバイクを傾けないんだ。他のライダーがバイクを傾けているのを見ているから、バイクをもっと傾けようとしているけれど、バイクを傾けるベストタイミングはコーナーの内側なんだ。長いことバイクを倒しているとスロットルが使えないから、コーナー出口ではなるべく早くバイクを立て直す方がいい。

ダニロ・ペトルッチ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)

Q:今現在完璧なライディングスタイルを持っているのは誰?

ペトルッチ:(マルク・)マルケスだ! ドヴィツィオーゾは見ていてとても参考になるし、学ぶことがある。でもマルクはさらなる何かを持っているんだ。マルケスがどうやっているのか分からないけど、彼は常に限界を探そうとしている。それは僕たちにとって怖いことだけれど、マルケスは何も恐れていないんだ!

Q:マルケスを見ていて学んだことは?

ペトルッチ:マルクを見て思うのは「自分ももっとやらなくては!」ということだ。僕はホンダに所属したことがないから、マルケスのデータを見たことがない。でも彼を追尾していると、常に可能性と限界を超えているように見える。

他のライダーが、コーナーでフロントを失ったら、これは正しいやり方ではないんだと言って、ピットに戻るだろう。マルクは2度フロントを失っても、それが普通だという感じで走り続ける。それが違いだと思う。

マルケスが現時点で最高のMotoGPライダーであることは確かだ。数字が物語っているからね。マルクと僕たちの大きな違いは、彼には恐れがないということだ。

Q:タイヤと電子制御の変化によって、他のライダーたちとの戦い方はどう変わった?

ペトルッチ:今の問題のひとつは、誰かをブレーキング中に抜く時に、フロントブレーキをリリースする際にラインを維持できないことだ。だから少しワイドになってしまい、イン側から他のライダーに追い抜かれてしまう。ドヴィツィオーゾとマルケスにはそういう場面が多くあったけど、僕たち全員に起こることだ。

ダニロ・ペトルッチ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)

だから他のライダーにぴったりついて、ブレーキング時にブロックしなければならない。イン側で徐々にブレーキングをして、他のライダーとサイド・バイ・サイドになり、完全に相手を抜かないようにする。ほとんど完全にストップさせ、いいタイミングがきたらコーナーに入り、他のライダーをブロックする。相手がイン側から抜いてこないようにね。これが追い抜きをする際の最善のやり方だと思う。今ではMotoGPでオーバーテイクをするのはとても難しいからね。

それと、今オーバーテイクが難しいのは、バイクの空力がとても優れているからなんだ。ストレートで他のライダーのすぐ後ろにいるとスリップのなかでスピードを出せない。

オーバーテイクのチャンスを掴むには、加速が優れている必要がある。2から3コーナー手前からアタックする用意をしなければならない。それでコーナーに少し減速して進入し、できるだけ早くスロットルを開けるんだ。でも問題なのは、そうすることでスライドとスピンがより起こりやすくなることだ。前のライダーを追い抜くと、タイヤが摩耗し、それでまた抜き返されてしまうんだ

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 ペトルッチはMotoGPで一番大柄なライダーだ。彼は問題を分かっている。なぜならタイヤにより荷重がかかってしまうことを避けられず、そのことはタイヤの寿命に影響するからだ。

 2018年の冬、ペトルッチは減量のために厳しい食事制限をしたが、シーズンに入ると最大限の走行をする力がなかった。2019年の冬、彼はより適切な栄養管理を行い、新チームメイトのドヴィツィオーゾとともにトレーニングをするだろう。より軽量かつ強力になって2019年に挑む考えだ。

 ペトルッチはドゥカティのファクトリーライダーとしての将来を確保するのに1度のチャンスしかない。彼の契約期間はたった1年なのだ。

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