甲子園春夏連覇左腕が目指す支配下復帰 3桁番号から「早く抜け出したい」

ブルペンで投球練習を行うソフトバンク・島袋洋奨【写真:福谷佑介】

育成契約1年目は3軍で25試合登板「色々大変な部分がありました」

 2010年の甲子園。春夏連覇を果たした沖縄・興南高のエースが島袋洋奨だった。春は全5試合、夏は全6試合に先発し、チームは負けなしの11連勝。「琉球トルネード」と称された独特のフォームで一世を風靡した。

 背番号「143」。これが現在、その島袋がソフトバンクで背負う番号だ。中央大を経て2014年のドラフト5位で入団。2015年に1軍で2試合に登板したものの、2017年夏に左肘の関節内遊離体(通称ネズミ)の除去手術を受けると、そのオフには育成契約へと変更となった。

 ラストイヤーの覚悟で挑んだ、育成選手としての1年目。手術を受けた左肘も順調に回復したとはいえ、ウエスタンリーグでの登板は6試合止まり。主に3軍戦での出場となり、そこでは25試合に投げた。「育成で1年間過ごして悔しさはありました。それを早く抜けられるように、支配下登録に戻れるように頑張りたいです」。育成選手として迎える2度目の春のキャンプ。左腕は昨季の悔しさを露わにした。

 同じソフトバンクの選手とはいえ、支配下選手と育成選手、1軍や2軍と3軍では環境面では雲泥の差がある。1、2軍は遠征時の移動は新幹線や航空機。一方で3軍選手たちは基本的にバスでの移動になる。四国ILとの交流試合などでは四国各県に7時間も8時間もかけてバスで移動する。

「1軍にはどうやっても上がれないですし、2軍の試合でもあまり投げることができなかった。3軍の遠征なども色々大変な部分がありましたし、そこは早くこの番号から抜け出したいという1つの思いですね。周りが若い選手ばっかりなので、僕がここでやらないように、上のステージでやれるように、と思います」。10代の若い選手ならまだしも、島袋は26歳、今季で大卒5年目になる。支配下も経験し、ルーキーイヤーには1軍でもプレーした。大きな環境の変化、周囲は自分よりも年下の若い選手ばかりという状況に、否が応でも悔しさが募った。

“トルネード”と呼ぶには捻りが少ないフォームに「強い球を投げるにはどうしたらいいか」

 視線の先にあるのは、支配下登録への復帰しかない。現在、行われている宮崎キャンプ。「強い球を投げるにはどうしたらいいか、というのを考えながらやっています。去年の秋のキャンプから久保さんに指導していただいて、コントロールはアバウトな感じで、そこを目指してやっています」と課題克服に取り組んでいる。

 大きな変化は、その投球フォーム。これまでは足を上げる際に大きく体を捻る“トルネード投法”が代名詞だったが、今は少し違う。投球方向に対して、まずは直角に足を上げる。スッと立つと、そこから全身を二塁方向に軽く捻って投球に移行していく。“トルネード”と呼ぶには捻りが少ないフォームになっている。

 島袋は言う。「足の上げ方を変えた部分はあります。強い球を投げることに関して、どうすれば体が素直に動くかというのを久保コーチに教わって、その動きを取り入れているやっている感じですね」。久保康生コーチの教えといえば、武田翔太や大竹耕太郎も取り入れ、片足で立ったところから前方に体を倒し込むようにする。それを実践し、ボールに力強さを出そうとしている。

 昨オフには背水の覚悟を示していた島袋は「去年と気持ちは変わっていないです」と今の思いを明かす。「これから実戦が始まってくるので、そこで今やっていることが出せるように、それから自分で感じることがあると思う。まずはしっかりそこを出せるようにしたい。怪我は全く問題ない。あとはどう実戦で出せるか出せないかなので、そこだけです」。宮崎キャンプもいよいよ第4クールに入り、紅白戦や練習試合が入ってくる。B組でチャンスを伺う島袋。復活を賭けた戦いに挑む。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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