一瞬の声援でも

 駅伝やマラソンを沿道で応援していると、選手が目の前を通り過ぎるのはあっという間だ。近づいてきた選手はすぐに後ろ姿となって遠ざかる▲抜きつ抜かれつの接戦、大差を縮めた驚きの追走劇…レースがたとえ手に汗握るスリリングな展開となったとしても、その場で目にできるのはごく一部にすぎない▲ほんの短い間だと分かっていても、多くの人が駅伝やマラソンを沿道に出て見ようとするのは、選手のスピードや表情や息遣いを感じたり、直接声援を送ったりすることができるからだろう。一番近づいた一瞬のタイミングに合わせて「頑張れ」と叫ぶ。家族や友人ならひときわ声に熱がこもるはず▲第68回郡市対抗県下一周駅伝大会は、きょうスタート。11チーム約380人の選手が、3日間にわたって白熱のレースを繰り広げる。42区間407.3キロという長丁場▲暦の上では春でも、まだ寒い空の下。ビルが立ち並ぶ街の中を、のどかな田園地帯を、風光明媚(めいび)な海岸沿いを、選手はふるさとの期待を背負ってたすきをつないでいく▲沿道から送られる「頑張れ」のひと言が、走り続ける選手にとっては励みとなり、苦しくなったときに気力を一層奮い立たせるパワーとなることだろう。今年もきっと寒風を吹き飛ばすような熱いドラマが生まれるはずだ。(泉)

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