『あるあるデザイン』ingectar-e著 言葉にして分類する快感

 あっ、このデザイン、見たことがある! ポスターや広告を見て、そのレイアウトになんとなく抱く「あるある感」。それを言葉で表現し、45のキャッチフレーズにして並べた。これが眺めていて飽きない。

 1つのフレーズに6つの作例と簡単な解説が付いている。「ナナメスタイリッシュ」というフレーズには、ハンバーガーのカラー写真の上下に「Delicious Burgers」などの文字が斜めに配置されたポスターを例示する。確かにこんなの、あるある。

 解説は「文字に角度をつけたり斜体の文字を使用すると、動きが出てごちゃごちゃせずにスタイリッシュにまとまります。細い文字を使用するとさらに洗練された印象に」。ふーむ、斜めに配置するとアカ抜けするわけか。

 「まわり余白最高」「フキダシ親近感」「グリッドってかしこそう」「困ったらストライプ」といったフレーズが並ぶ。本欄で取り上げた『あの人に会いに』の表紙は「動く文字」、『神は詳細に宿る』は「丸インパクト」に分類されそうだ。

 デザイナー初心者が重宝するマニュアル本というだけではない。私たちは普段ぼんやり眺めているものに漠然とした印象を抱いている。それがシンプルな言葉で表現され、カテゴリー化される快感。本書の魅力はそこにある。

 これは絵画や建築にも応用できるはずだ。本の題名だって「あるあるタイトル」として分類可能だろう。この「あるある」という類型化からまぬかれたものが「オリジナル」と呼ばれることになるんだろうな。

(エムディエヌコーポレーション 2000円+税)=片岡義博

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