田中実さん平壌に、特定失踪者家族の声

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救う会福井の森本信二会長=2017年9月

 北朝鮮による日本人拉致問題を巡り、政府が被害者に認定している兵庫県神戸市の元ラーメン店員田中実さん=失踪当時(28)=が結婚し平壌(ピョンヤン)で妻子と共に生活していると、北朝鮮が日本側に伝えていたことが2月15日、分かった。2014年以降の両国の接触で複数回、伝えてきた。政府が「拉致の可能性を排除できない」としている田中さんと同じラーメン店の店員だった金田龍光さん=同(26)=にも「妻子がいる」と伝達。日本政府関係者が明らかにした。

 拉致被害者の田中実さんと、拉致の可能性が疑われる特定失踪者の金田龍光さんが、平壌(ピョンヤン)で妻子と暮らしているという情報が日本側に伝わってきたことを受け、福井県内の特定失踪者家族は「私たち家族も希望が持てる」と話した。一方、関係者からは「北朝鮮は情報を小出しにし、日本の反応を見ている可能性もある。これまで通り拉致被害者全員の一括帰国を求める姿勢を貫くべき」との声もあった。

 福井県敦賀市の特定失踪者、山下貢さん=1989年失踪当時(39)=の妹山森啓子さん(65)は「情報が正しいなら、拉致被害者は日本政府認定の17人以外にもいるということ。(特定失踪者の金田さんと)兄は同じ立場であり、前向きにとらえたい」と話した。

 救う会福井の森本信二会長(63)も「(田中さんらの)家族にとって喜ばしいこと」と語った。金田さんが北朝鮮で生活しているとの情報には「特定失踪者が北朝鮮にいると伝わってきたことは大きい。真相究明に期待が持てる。政府には毅然(きぜん)とした対応で解決に向かって進めてもらいたい」と要求した。

 北朝鮮は日本人拉致被害者について「8人死亡」の主張を変えておらず、田中さんと金田さんは含まれていない。救う会副会長の島田洋一福井県立大教授は、日本側に情報を流してきた北朝鮮の思惑について「日朝首脳会談を考えている兆候ではあるだろう」と分析した上で「(死亡とされる)8人以外の人間の情報を流し、日本の反応を見ている可能性がある。8人死亡を既成事実化したいという狙いがあるのかもしれないが、日本側は全員の一括帰国を訴えていくべき」と強調した。