骨髄バンク高まる関心 競泳・池江選手の白血病公表後

 競泳女子のエース、池江璃花子選手(18)が自身の白血病を公表して以降、全国各地で骨髄バンクのドナー登録が増えている。長崎県でも登録窓口への問い合わせが相次ぐなど関心が高まっているようだ。
 県内では2カ所の献血ルームなどがドナー登録の窓口。15日午後、その一つ、長崎市浜町の「献血ルームはまのまち」を訪れると、40代男性がドナーになるための説明を職員から受けていた。取材に「前々から骨髄バンクに興味を持っていた。池江選手のニュースに関連するツイッターを見て、ここで登録できることを知って来た」と話した。
 同ルームによると、通常、ドナー登録は「月に1人いるかいないか」。だが、池江選手が公表した翌日の13日から16日までに9人が登録。大半が「ニュースを見て、自分にできることはこれくらい」などと話しているという。池江選手と年齢の近い世代の間では会員制交流サイト(SNS)を通じて情報が広がっているとみられ、同ルームの平山敬夫主事は「若い世代にも献血や骨髄バンクに関心を持っていただきありがたい」と話す。
 血縁がない人の間で移植を橋渡しする骨髄バンクの制度は1992年に始まり、県薬務行政室によると、ドナー登録している県内在住者は7327人(昨年末現在)。これまでに県内在住のドナーによる提供例と、県内在住の患者が非血縁者から移植を受けた例は、それぞれ207例を数える。
 骨髄移植の条件は患者とドナーの白血球の型が一致すること。その確率は兄弟姉妹間では4分の1だが、非血縁者間だと数百から数万分の1とされる。そのため、関係者は「一人でも多くの登録を」と訴える。

 白血病患者らの命をつなぐ骨髄バンク。全身麻酔による手術や術後の副作用への不安などから二の足を踏む人も少なくない。では実際、ドナーとして骨髄を提供する際の心境はどのようなものなのか-。
 諫早市職員の近藤博文さん(42)は昨年4月、日本骨髄バンク(東京)から「適合通知」が届いた。ドナー登録したのは、その約3年前。忘れていたタイミングでの連絡に驚きはしたが承諾した。
 6月に病院に呼ばれ、最終確認。近藤さんは子どもが生まれたばかりの時期であり、術後の後遺症のリスクなどを考え「どきどきしたし不安もありました」。説明の際、担当医から示された手術の様子の写真も恐怖心に襲われないよう、あえて見なかった。それでも「人の役に立てるなら」と妻が同席する中で最終同意した。
 7月上旬に手術に臨み、「寝ている間に」終了。県外の高齢者への移植手術も無事に成功したと連絡があった。「リスクはゼロではないけど、人の役に立ちたいという思いが勝った。うれしかったですね」
 ドナー登録の年齢制限は18歳~54歳。骨髄の提供は2回まで可能だ。
 「また登録しますか?」。近藤さんに尋ねると、「もちろん」と笑顔で返ってきた。「ドナー登録の方法を知らない人が多いけど少しの採血で登録できる。『人のために何かしたい』と思っている人にはぜひ協力してほしいですね」

骨髄バンクのドナー登録について職員(右)から説明を受ける男性。池江選手の公表後、ドナー登録は増えている=長崎市、献血ルームはまのまち

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