2019年シーズンを戦うF1ニューマシンが続々と発表されている。今年は空力に関するレギュレーションが変更されたため、ニューマシンの空力パーツ、特にフロントウイングのデザインに多くの注目が集まっているが、今シーズン新しくなるのは、マシンだけではない。全チームに供給されているピレリのタイヤも新しくなっている。
まず、コンパウンド。2018年までは7種類あったが、2種類減って5種類となった。なくなったのはスーパーハードタイヤとスーパーソフトタイヤだ。つまり、今年採用される5種類のコンパウンドは硬い方から、ハード、ミディアム、ソフト、ウルトラソフト、ハイパーソフトとなる。
ただし、今年からピレリは視聴者がタイヤの識別を行いやすいようにタイヤのカラーリングを3色にし、各グランプリに持ち込まれた硬い方から白、黄、赤にする。そのため、コンパウンドの呼び方も変え、C1(昨年までのハードに該当)、C2(昨年までのミディアムに該当)、C3(昨年までのソフトに該当)、C4(昨年までのウルトラソフトに該当)、C5(昨年までのハイパーソフトに該当)となった。
ちなみにテストでは5種類すべてが投入されるため、中間の3種類(ミディアム、ソフト、ウルトラソフト)は白、黄、赤のラインがサイドウォールに入っているが、ハードはラインなしの白字のマーキング、ハイパーソフトもラインなしの赤字のマーキングのものが供給される。
ところが、問題は昨年のコンパウンドと今年のコンパウンドがまったく同じではないことだ。ピレリのマリオ・イゾラ(ヘッド・オブ・カーレーシング)は次のように語る。
「コンパウンドに関して、われわれは変更を加えた。ワーキングレンジをこれまでより高くした。これにより、オーバーヒートが抑制され、デグラデーション(性能劣化)が軽減されるだろう」
つまり、ゴムは硬くなる方向になっていると考えていい。その結果、ウォームアップが難しくなることが考えられる。
コンパウンド以外にもピレリが加えた変更がある。それはタイヤのラバーの厚みを薄くした『シン・ゲージ』を採用したことだ。
『シン・ゲージ』は昨年のスペインGP、フランスGP、イギリスGPで採用された。その目的はラバーの厚みを薄くすることでラバー内部の発熱を抑制し、ブリスターが発生しにくいタイヤにすることだ。
■シン・ゲージ導入で予想されるタイヤの扱い方
昨年は『シン・ゲージ』が投入された3つのグランプリではブリスターがほぼ起きなかった反面、ほかのグランプリ(オーストリアGP、イタリアGP、アメリカGP)では多くのドライバーがブリスターに悩まされた。そこでピレリは2019年はすべてのグランプリで『シン・ゲージ』を採用することになった。
これにより、ブリスターは抑制されるだろうが、ゴムが動きにくいということは、タイヤが温まりにくいという反作用を生む。つまり、2019年のコンパウンドは、ワーキングレンジが高くなったこととシン・ゲージ化によって、昨年よりも大幅に硬くなっていることが考えられる。
さらにイゾラによれば、2019年のタイヤは「コンストラクション(構造)に新しいマテリアル(素材)を使用し、ウェアプロファイルも向上させたものになっている」という。ウェアプロファイルというのは摩耗の仕方で、ラバーの形状変更を意味する。昨年ブリスターに悩まされたことを考えると、タイヤの中央の膨らみを減らした、よりフラットな形状になっていることが考えられる。
このように2019年のピレリタイヤはコンパウンドとコンストラクションが一新されていることがわかる。これは、各チームにとって、空力の変更と同様、大きな改革だといっていい。
今シーズン初の合同テストとなるスペイン・バルセロナのプレシーズンテストでは、マシンのデータ取りだけでなく、タイヤの特性を見極めるためのデータ取りが忙しくなるだろう。今年のテストは、いつも以上に走行マイレージが重要となりそうだ。