野毛大道芸に黄信号? 進むボラ高齢化 「若者増やしたい」

 日本三大大道芸フェスティバルに数えられ、春の恒例行事として例年10万人超が訪れる「野毛大道芸」の存続に、黄信号がともっている。運営を下支えしてきたボランティアの減少と高齢化が進んでいるためだ。「街の手作りのフェス」として34年目を迎える今、実行委員会は「一緒に楽しんでくれる若い仲間を増やしたい」と期待している。

 もう25年ほど前になる。横浜をカバーするフリーペーパーに、野毛大道芸がボランティア募集の広告を出した。そのコピーが秀逸だ。

 〈生き方、死に方教えます。恋の作法も少しずつ〉

 野毛で生まれ育ち、現在は実行委でボランティアのまとめ役として運営プロデューサーを務める平木茂さん(63)が振り返る。

 「あまり期待はしていなかったんですけどね。80人近い応募があって驚いた。数年後には120人くらいまで膨れ上がった」

 ほとんどが20代から30代。「恋の作法」のうたい文句通り、10組近いカップルが結ばれた。実は平木さんもその一人だ。

 ボランティアは街中に配されるステージの管理や進行、人波の整理などを任される。芸人とお客さん、そしてスタッフも楽しめるように努力する。いうなれば大人の本気の文化祭。しかも舞台は「呑兵衛(のんべえ)の街」だ。ケンカも恋も友情も生まれてしかるべし。まさに「生き方、死に方」も地でいった。

 芸人からの評判も良かった。「多くの方が『野毛のスタッフは面倒見がいいし、芸のことをよく分かっている』と言ってくれる。大道芸への変わらぬ愛があるからだと思う」。芸人の手配などを担う裏方の大ベテラン・大久保文香さん(78)はそう誇る。

 だが近年はボランティアが固定化し、必然的に年齢層が上がってきた。大久保さんは「このまま若い人が来てくれないと近い将来、本当に人手が足りなくなる」と不安がる。

 動機は何でもござれだ。芸人と話したい、街を盛り上げたい、出会いが欲しい、野毛の裏側をのぞきたい…。実行委は年間を通じて月に1度は集まり、開催の1カ月前の3月からは毎週末に打ち合わせを持つが、平木さんは「本番の1日だけ来てくれるのでも大歓迎」と語る。

 「うちは来る者拒まず、去る者追わずでやってきた。芸人と直で触れ合えるのも面白いし、何より楽しいのは打ち上げ。野毛が好きでも大道芸が好きでも、何でもいい。スタッフも芸人も変な人が多いので、きっと面白いと思います」

 1980年代初頭、三菱重工業横浜造船所の閉鎖によりどん底に陥った街の再興をと、地元の呑兵衛たちが企画した野毛大道芸。時を経て今や街は、かつてないほど若者たちでにぎわう。平木さんは「そういう人たちの中から、仲間が出てきたら本当にうれしい」と話している。

 今年の開催は4月27、28日。ボランティア募集は随時受け付ける。野毛大道芸ホームページからか、同事務局電話045(262)1234から。

12万人が楽しんだ野毛大道芸=横浜市中区=2016年4月

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