茨城沖、水揚げ異変 熱帯性増、北回遊は不振

水温上昇、魚介類に影響

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昨年8月、ひたちなか沖の水深26メートルで捕獲されたクマサカフグ

茨城県沿岸で近年、南日本の海域に生息する熱帯性の魚介類の水揚げが相次いでいる。クマサカフグ、クエ、アラレフグが本県沖で初確認され、サザエが漁網に掛かることも多くなった。一方で、冷たい海を好むサケやサンマなどが北日本の海域から入ってこないため、漁業者は頭を痛めている。専門家は「黒潮の暖かい水の塊が沿岸近くまで張り出す現象『暖水舌(ぜつ)』が5年ほど前から強まっており、沿岸水温が上昇している」と原因を分析する。

昨年8月、久慈漁協所属の遊漁船・泰平丸(関沢泰造船主)がひたちなか沖で、房総半島以南から屋久島、台湾などに分布するフグ科の「クマサカフグ」を釣り上げ、貴重な標本として県自然博物館に収蔵された。相模湾以南や屋久島、台湾などに生息する高級魚のクエが昨年、日立市の久慈漁港で初めて計4匹も捕獲された。同市の会瀬沖では2017年6月、アラレフグが水揚げされた。

このほか、日立沖のヒラメ刺し網漁や伊勢エビ漁の網にサザエが交じることも多くなり、久慈漁港では昨年、初めてサザエを市場に出荷した。

県自然博物館資料課長やアクアワールド県大洗水族館副館長を務めた舟橋正隆さん(71)は「以前は、漁師から魚の確認依頼が月に3件ぐらいあったが、最近は月に10件ほどに上る。漁師でさえ見たことがない南日本の魚が多く、戸惑っているようだ」と、本県沿岸の異変を指摘する。

一方で、平潟漁協所属の第3隆栄丸、鈴木隆志船長(70)は「例年、今頃になると水温は10度以下に下がるが、今年は14度(14日現在)と高い。昨年はタラが北から回遊してこなかったため、市場に出荷できなかった」と話した。同漁協所属の別の男性漁師も「一昨年からサンマが北から降りてこなくなった。漁にならない」と困惑の色を浮かべた。

本県沿岸は親潮(寒流)と黒潮(暖流)が交錯して潮目を形成する特徴的な海域。県自然博物館の魚類担当者は「南方性の魚の生息域が北上しているのは間違いない。本県沿岸は県央から県北にかけて岩礁帯と藻場が多く、魚が定着しやすいことから、日立沖などで変化が顕著に表れている」と解説する。

鹿島灘など鹿行地域でも10年ほど前から伊勢エビ漁が盛んになっており、銚子漁港(千葉県)に水揚げしている。(小室雅一)

昨年8月に日立市の久慈漁港で捕獲されたクエ