フェラーリF1代表、チームオーダーの可能性を認める。「優先順位があるのは普通のこと」

 シャルル・ルクレールがフェラーリF1と契約した際、契約書にはセバスチャン・ベッテルに対してナンバー2ドライバーの役割を果たすべきであるといった内容は一切記載されていなかったと、彼は主張している。

 しかしフェラーリF1チーム代表マッティア・ビノットは、おそらくはベッテルがルクレールよりも優先的に扱われるだろうと語る。ベッテルは経験豊富であり、世界選手権を制覇する最大のチャンスを有しているからだ。

「特にシーズン序盤に、ある種の状況に遭遇した場合、優先順位がセバスチャンに置かれることは普通のことだと考えている」とビノットは新マシン『SF90』の発表後に語った。

「彼は我々がチャンピオンシップ制覇を目指すにあたってのガイド役なのだ。だが偏見があるわけではなく、絶対的な優先順位はフェラーリが勝つことにある」

 ルーベンス・バリチェロがフェラーリと契約した際、彼もナンバー2ドライバーになることはないと信じていた。しかしフェラーリで過ごした2000年から2005年の間、彼はチームオーダーに従うことが多く、ミハエル・シューマッハーに優先的な扱いと勝利を譲らなければならなかった。

 最も悪名高いレースは、バリチェロがシューマッハーを先行していた2002年のオーストリアGPだろう。それはまだシーズン6戦目のことだったが、フェラーリはバリチェロにシューマッハーを勝たせるように指示を出した。ファンは怒り、フェラーリに対してブーイングを行なっている。

 キミ・ライコネンは2015年から2018年にかけての第2期フェラーリ時代、わずか1戦(2018年アメリカGP)でしか優勝していない。だがベッテルを優先するチームオーダーに従う必要がなければ、彼はもっと多くの勝利を得ることができていただろう。

 チームオーダーはF1の一部だ。メルセデスがチームメイトのルイス・ハミルトンを先行させるようバルテリ・ボッタスに指示していなかったなら、彼は2018年のロシアGPを制していただろう。

 だが少なくともメルセデスはチームオーダー戦略について、チームのドライバーとファンに対して常に正直でオープンだ。メルセデスには、シーズン終盤に片方のドライバーに明らかにタイトルを獲得するチャンスがあり、もう片方にはない場合以外にはチームオーダーを出さないというポリシーがある。

 一方でフェラーリのチームオーダー戦略は曖昧だ。2018年のドイツGPで、チームはライコネンに対し漠然とした指示を出している。最終的には苛立ったライコネンが、無線で「もし彼(ベッテル)に僕を抜かせたいのなら、そう言ってくれ!」と言うほどであった。

 けれどもイタリアGP予選でのフェラーリはチームオーダーの発令や戦略を立てることをせず、結果としてライコネンがポールポジションを獲得している。ベッテルはグリッド2番手からスタートし、ハミルトンとの順位争いでスピンを喫することなり、最終的にハミルトンが優勝しベッテルは4位に終わった。

 フェラーリの2019年のドライバーについてビノットは次のように語っている。

「非常に競争力のあるドライバーコンビを擁することは、問題ではなくチャンスだと考えている。セバスチャンは何も証明する必要はない。彼は我々のガイドなのだ。シャルルは自分でも指摘しているように、まだ学ぶことがある。だが彼にどれだけの才能があるかということを、我々は理解している。ふたりのドライバーがトップの座をかけて戦うという問題が起きることを、期待している」

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