富士山でも遭難ってあるの?〈傾向と原因から考える〉登山準備まとめ 年間30万人もの人が訪れる富士山。人生で一度くらいチャレンジしたいと思っている人もいるのでは?普段登山をしない人でもチャレンジしやすいため、「危なくない」と思われていますが、富士山も山。そこには危険が潜んでいます。今回は、富士山での遭難の傾向と原因や、安全に登るための準備についてもまとめました。ぜひ、富士登山の準備の際に役立ててください。

なめてはいけない!富士山でも遭難は起きる

日本で一番高い山”富士山”。普段登山をしない人でも「人生で一度くらいは富士山に登ってみたい」と思っている方が多く、さまざまなレベルの登山者が訪れる山です。

富士山にも危険は潜んでいる

富士山は普段登山をしない人でもチャレンジしているような山だから、誰でも気軽に登れるイメージがありませんか?確かに登山コースがハッキリしていたり、山小屋がたくさんあるなど、環境は整備されている山です。

しかし富士山にも他の山と同じように、さまざまな遭難の危険が潜んでいることは意外と知られていません。

富士山の遭難の傾向

静岡県警察が発表しているデータを元に、富士山での遭難傾向を見ていきましょう。
(山梨県警察発表のデータは母数が少ないため、今回は割愛しています。気になる方は、こちらで確認可能です。)

①登山者が増える開山時期に集中

(参考:各年の静岡県山岳情報 )

基本的に冬には登れないため、開山期の7月上旬~9月上旬に登山者数が増加。登山者の数に比例するように、遭難者数も増えています。

(参考:各年の静岡県山岳情報 )

遭難の内容は、転倒・発病(高山病など)・疲労が毎年上位をしめています。富士山は普段登山をしない人も多く登るため、登山に慣れていないことや体力不足が、大きな要因になっているようです。

富士登山で気をつけるべきことは?

富士山で起きている遭難には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?主な6つの遭難理由を見ていきます。

①岩場が多い富士山での”転倒”は要注意!

富士山は登山道によっては勾配もきつく、石や岩がゴロゴロしています。そのため、不安定な浮石に足を乗せてバランスを崩したり、下山時にスピードがコントロールできずに転倒する事故が起こっています。

平成28年8月には、50代の男性が下山中に転倒しかけて足を挫き、右足脛骨を骨折する事故も発生。富士山の遭難理由で最も多い転倒。他人事ではありませんよ。

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②長時間の行動による”疲労”

富士山は歩行時間が長く、登りはおよそ6時間~8時間、下りは約4時間程度かかります。そのうえ酸素も薄く、とても過酷な環境です。

弾丸計画など、自分の体力以上の行程で疲労から動けなくなったり、集中力を欠くことにより転倒が多く発生しています。

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③普段と違う環境での体調の変化には要注意(高山病、低体温症)

【高山病】

標高が上がるとともに酸素は減少。富士山のような高山に登って高度が上がった時に、低酸素状態に体が順応できず頭痛や吐き気などが起こります。

個人差はありますが、高齢者、子供、貧血の人、風邪・寝不足の人がなりやすく、登るペースが速すぎることも高山病の原因です。

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【低体温症】

低体温症とは人間が生命を維持するために必要な体温が水準より下がるもので、直腸温が35℃以下になると低体温症と診断されます。

富士山は標高が高いため普段生活している場所よりも気温が低く、8月でもご来光待ちの時は0℃を下回ることも。

また、雨や風に体がさらされると一気に体が冷えて不調を招きかねません。
過去に50代の男女が下山中に吉田口登山道九合目付近で、強風と寒さにより歩行困難となり転倒し、低体温症になったケースもあります。

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④視界不良による”道迷い”

富士山はたくさんの登山者がいて見晴らしが良いので、道迷いはないと思っている人が多くいます。
ところが、濃霧などによって視界が悪くなると目印がなくなるため、自分の位置が分からなくなることも。地図やGPSアプリを使いこなせない人は、とくに注意が必要です。

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⑤小さな石でも”落石”は危険

登山未経験者は落石に注意した歩き方ができない人も多く、森林限界を超えると落石が起こった時に止めるものもなくなるため、初心者が多い富士山の登山道は危険です。小さな石でも勢いがつくと致命傷になりかねないので、油断は禁物。

平成30年8月には30代の女性が下山中、落石により顔と肩を負傷し、意識を失い五合目に搬送されるという事故も実際に起きています。

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⑥悪天候(雨、雷)は想像以上の驚異

富士山は落雷が起きた時に隠れるような場所がありませんし、風が吹いても遮るものがほとんどありません。そのため、天候が崩れるとモロにその影響を受けてしまうことに。
近年でも、20代の女性が下山中に寒さで行動不能となり救助要請をした事例があります。

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まとめ
富士山は「整備されていて登りやすい山」ではあるが、実際にさまざまな事故が起きている。そのリスクを知ることや対策は、富士登山の成功のために必要!

富士山登頂のためには、準備が大切!

せっかく富士山挑戦するのだから、登頂に成功して安全に下山したいですよね。遭難の傾向から必要な準備を①登山装備②計画③体調面 の3つにまとめました。
しっかりとした準備が登頂成功の確率を、グッと上げてくれますよ。

【1】どんな道具が必要なのかを調べる

富士山を登るのに、特に重要なウェアをピックアップしました。最低限揃えておきたいアイテムです。

【登山靴】

舗装されていない道を長時間歩くため、靴はとても重要。できればゴアテックスなどの、防水モデルのものであれば急な雨でも安心です。

普通の靴と感覚も違うのため、低い山でもよいので事前に履いて足にならしておきましょう。

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【速乾性のウェア】

綿などの乾きにくい素材のウェアは、汗や雨で濡れた時になかなか乾かず、体を冷やす要因に。肌に直接着る服は、必ず速乾性のあるものにしましょう。

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【防寒着】

富士山は標高が高く上に登るにつれて気温が下がってきますし、天候の変化で急に寒くなることも。フリースやダウンなどの防寒着は、必携です。

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【レインウェア】

富士山では、急に雨が降ることもあります。雨に濡れると体が冷える原因となるので、上下のレインウエアは忘れないように。

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【ヘッドライト】

富士山には外灯がないので、暗くなると何も見えなくなります。予定通り目的地にたどり着けないことや山小屋などの夜間の行動のことも考えて、ヘッドランプは必ず携行しましょう。予備の電池も忘れずに。

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【2】ルートを確認し、登山計画を立てよう

まずは難しく考えずに、どんなコースなのかを事前に予想するつもりで調べてみましょう。富士山はたくさん情報があるので、情報も見つけやすいはず。
距離やかかる時間、登山道のようす、トイレや売店があるかなど、気になることをどんどん調べていきましょう。
▼各ルートの情報をチェックしよう
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■初心者はひとりで登らない!

自分たちだけ行くのが不安な時は、経験者と一緒に登るか、ツアーに参加するのも手です。特に、登山未経験者や初心者の方が一人で行くのは、何かあった時に対応が難しいため、避けたほうがよいでしょう。

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■登山計画書は必ず提出

コースの予習ができたら、それをもとに登山計画書を提出します。歩くペースは、25分歩いたら5分休憩、50分歩いたら10分休憩など、休憩を定期的に入れて計画を立てましょう。

ここで具体的な行程を決めていると「次の小屋まであと何分くらい」など、先が予想できるので不安な気持ちも少なく登山ができます。

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【3】当日に向けて体調を整えよう

普段あまり運動をしていない人は、富士山に登るまでに簡単でよいので体を動かしておきましょう。

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できれば、時間を作って実際に山に登っておくことがおすすめ。靴やウェアなどを実際に使って、不具合にならないかの確認は必須です。

富士山に登る数日前から、しっかりと睡眠を取って体調を整えておきましょう。寝不足や体調が良くない場合は、高山病にかかるリスクもアップ。万全な状態で挑みましょう!
▼何から始めたらよいかわからない人はまずはこれを読んでみよう

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安全に富士登山を楽しもう

一般の登山者がチャレンジできる期間は、開山期の間だけ。せっかく登るのであれば、遭難事故を起こさず安全に登頂・下山したいですよね。

そのためには事前準備が肝心です。十分な準備をして、日本で一番高い富士登山を楽しんでください。

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