津波予見義務が最大の争点 原発避難者訴訟、あす地裁判決

 東京電力福島第1原発事故の影響で福島県から神奈川県へ避難した住民らが、国と東電に総額約53億9千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、横浜地裁(中平健裁判長)で言い渡される。津波の襲来を予見し、適切な対策を講じておく義務が国と東電にあったのかが最大の争点。事故による損害の範囲としてどこまでを認め、賠償額に反映するのかも焦点になる。

 弁護団によると、訴えを起こしたのは福島県からの避難者ら60世帯175人。このうち125人は、南相馬市や大熊町など避難指示区域に住んでいた。避難生活による精神的苦痛への慰謝料(事故後から1人当たり月額35万円)や故郷を失った「ふるさと喪失」への慰謝料(1人当たり2千万円)などを求め、2013年9月から順次提訴した。

 原告側は、政府の地震調査研究推進本部が2002年にまとめた長期評価に基づき、東電は原発の敷地の高さを越える津波の到来を予見し、速やかに必要な対策を講じるべきだったと主張。国の責任についても、「規制権限を有していながら、東電に具体的な対策工事を何一つ行わせることができなかった」として追及している。

 また国が示した基準に基づき東電がこれまで支払ってきた賠償は不十分とも指摘。低線量被ばくの危険性にさらされるなど避難生活を余儀なくされている原告らに適切な賠償を行うことを求めている。

 東電側は「事故原因になった津波と同程度の津波を予測する知見は当時存在せず、予見は不可能だった」と反論。賠償についてもすでに十分な額を支払っているとした。国は東電に対する規制権限を有していなかったとして事故責任を否定し、津波の予見もできなかったと主張している。

 原発事故を巡る同種の集団訴訟約30件のうち、これまでにあった7件の一審判決全てが東電の責任を認め、賠償金の支払いを命じた。このうち国が被告になっている訴訟が5件あるが、4件で国の責任も認定した。一方で請求額に比べて賠償額が低く抑えられる傾向にあり、原告側が判決を不服として控訴するケースが続いている。

横浜地裁

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