初選出11人のフレッシュ侍 なぜ常連組は選ばれなかったのか

会見に臨んだ侍ジャパン・稲葉篤紀監督【写真:福谷佑介】

3月9、10日の強化試合へ坂本勇&秋山&山田哲らは選出されず

 野球日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督は18日、沖縄・那覇市内で記者会見を行い、3月9、10日に行う強化試合メキシコ戦のメンバー28人を発表。日本ハム・清宮幸太郎、ヤクルト・村上宗隆、オリックス山本由伸ら11選手が初選出となるなどフレッシュな顔ぶれが集まった。

 かつて侍ジャパンで活躍した巨人・菅野智之、楽天・則本昂大、ソフトバンク・千賀滉大や、すでに開幕投手に指名された日本ハム・上沢直之、西武・多和田真三郎らの代表入りはもちろん、西武の秋山翔吾、巨人の坂本勇人、ヤクルトの山田哲人、広島の菊池涼介、そして故障を抱えるソフトバンクの柳田悠岐ら、主力野手の招集も見送られた。稲葉監督がすでに常連組の実力を熟知しているとはいえ、なぜ選ばれないのか。

 3月上旬の球界はオープン戦の真っ只中。主力投手はもちろん、主力級の打者も3月下旬の開幕に合わせた調整段階だ。今回選出された侍ジャパン28選手で3年以上1軍で安定した活躍を見せ、タイトルなどを奪取したのは18年セーブ王のソフトバンク・森唯斗、17年ゴールデングラブ賞の巨人・小林誠司、3度の盗塁王、ベストナイン2度、ゴールデングラブ賞2度の日本ハム・西川遥輝、16年ベストナインのロッテ・田村龍弘、18年セーブ王のDeNA・山崎康晃らか。ただ、チーム全体を見渡せば、まだまだ伸び盛りの選手という印象だ。

 今回の侍ジャパン28選手の平均年齢は24.2歳と若い。日本ハム・清宮幸太郎やヤクルト・村上宗隆の19歳コンビを始め、巨人の吉川尚輝ら今後の球界を背負うべき選手たち。3月上旬という時期はレギュラー定着へアピール必至で、レギュラー格の選手よりも体の仕上がりが早いと言える。また、稲葉監督は会見で「チームを作り上げていく過程で、本番までに不測の事態や想定外なことが起きることもあると考え、このメキシコ戦は私の選択肢を増やすためにも、まだ見ていない力のある選手を試す最後のチャンスとしました」と語っており、その意図は明確だ。

選手には故障のリスクも…全ては野球競技が復活する2020年東京五輪での金メダルのため

 実績のある選手が調整段階で“本気”の試合に臨めば、故障のリスクも高まる。選手を送り出すチームの心配は、そこも大きいかもしれない。投手では石井弘寿(ヤクルト)が2006年の第1回WBCで左肩痛を発症。その後は目立った活躍はなく、11年で現役引退した。09年WBCで2大会連続で最優秀選手に選ばれた松坂大輔(当時レッドソックス)はその直後、右肩の疲労を理由に4月15日に故障者リスト入り。08年は18勝を挙げたが、09年は4勝止まりだった。野手でも村田修一(当時横浜)が09年の第2回WBCで走塁中に右太もも裏肉離れ。1軍復帰は開幕後の4月21日だった。あのイチロー(マリナーズ)も第2回WBC後に「胃潰瘍性出血」と発表され、開幕アウトとなっている。

 当然、WBCと強化試合では本気度、プレッシャーも違う。とはいえ、16年10月の日本シリーズで右足首痛を発症した大谷翔平(当時日本ハム)は同年11月のメキシコとの強化試合で患部が悪化。17年の第4回WBCは欠場し、17年シーズンでもその右足首痛の影響でシーズン序盤に左太もも裏を肉離れ。メジャー移籍前のラストイヤーは結果的に3勝、8本塁打にとどまった。もちろん、負傷のリスクは日本代表に限らずどの試合でもつきまとう。ただ、逆に言えば3月の試合は思い切ってプレーする若手を試す絶好の機会とも見ることができる。

 侍ジャパンの強化試合は主にシーズン前の3月か、シーズン後の11月に行われている。その度に開催時期などが話題となっているが、シーズン中の国際試合となれば、より多くの問題が出ることも確かだ。全ては野球競技が復活する2020年東京五輪での金メダルのため。稲葉監督ら侍ジャパン首脳陣は限られた中で成長のヒントをつかんでいけるか、試されている。(Full-Count編集部)

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