キャンプこその醍醐味、間近で味わうブルペン投球練習 観客席を設ける球団も

今年もキャンプ地には多くのファンが駆けつけている【写真:荒川祐史】

午前中に各チームともブルペンで投球練習

 プロ野球の春季キャンプで見ものの1つとなるのが、ブルペンだろう。投手が投げ込み練習をする場面を、一般のファンが間近に見ることができるのはキャンプ期間だけだ。

 ブルペンでの投球練習は、入念なウォームアップの後、体が温まってから行われる。宮崎県でキャンプを張るチームでは、午前11時以降に始まることが多い。気温が高い沖縄では、それより少し早い。沖縄本島よりさらに暖かい石垣島のロッテキャンプでは、練習開始が9時と早めなこともあり、10時前からブルペンで投げる投手の姿が見られる。

 キャンプ後半になると、ブルペン入りする時間は少しずつ早くなる。午後に練習試合やオープン戦が組まれるため、10時頃から始める投手が増えてくる。

 ブルペンでの投球練習は、球団によってその内容は厳格に管理されている。もちろん、投手本人の意向も反映されるが、投げ過ぎを防ぐために投球数はすべてカウントされている。また、投球フォームをチェックするためにビデオ撮影をする場合も多い。

 投手の球を受けるのは、背番号3桁のブルペン捕手が多い。しかし、時には正捕手が受けることもある。ブルペン捕手と正捕手の捕球の違い、捕球音の違いを実感するのも、見どころの1つだ。

 ブルペンに入る順番は、投手のランクで振り分けられることが多い。運が良ければ、エースを筆頭とする先発投手の揃い踏みや、クローザーとセットアッパーの競演を見ることもできる。主力の中に若手投手が混じることがあるが、そこから首脳陣が若手にかける期待感を知ることもできる。

ファンが見学できる観客席を設置する球団も

 かつて、春季キャンプでのブルペン投球練習は、ファンにあまり公開されていなかった。ファンは窓の隙間から覗いたり、報道陣の後ろから遠巻きに眺めるしかなかったが、近年では次々とブルペンの横に観客席が設けられるようになった。西武、ソフトバンク、オリックス、楽天、阪神、巨人、中日などがそうだ。中日は昨年から観客席が設けられ、窓越しではあるが、投球を見ることができるようになった。昨年は松坂大輔が人気を呼んでいた。

 これまでのブルペンはマウンドとホームベース部分だけが屋根で覆われた屋外施設が大半だったが、最近は全体が屋根で覆われた屋内ブルペンが増えている。巨人の宮崎キャンプでは、今年からメイングラウンドの横に大きな屋内ブルペンが設けられた。宮崎キャンプの敷地は広大で、投手陣はバスでブルペンまで移動していたが、今年は歩いて移動できるようになった。

 また阪神の宜野座キャンプでも、今年からブルペンが屋内施設になった。観客席は建物の外側に設けられ、ファンは窓越しに投球が見られるようになっている。

 全体練習で予定されるブルペン投球では投手がユニホームを着るが、それとは別に、全体練習が一段落した午後に1~2人の投手がTシャツ姿でマウンドに現れることもある。故障で離脱していた投手がフォームを確認しながらゆっくりと投げたり、若手投手が新しい変化球を試すために投手コーチと一緒に1球1球変化を確かめていたり。そういうディープなシーンに出くわすのも、キャンプの楽しみの1つと言えるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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