学童保育 質の後退懸念 支援員の配置基準緩和へ

©株式会社長崎新聞社

 共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)の放課後児童支援員を巡り、配置基準の緩和が今国会で審議される。現在は「おおむね児童40人以下に対し2人以上」とされているが、政府は人手不足などに悩む地域の実情に配慮し自治体の裁量を拡大する方針で、「1人」も可能になる。だが子どもの安全のため基準堅持を求める意見も根強い。

 「ただいまー」。午後3時前、長崎県松浦市の志佐児童クラブに、隣の志佐小から帰ってきた児童の元気な声が響いた。子どもたちは次々とクラブ内に入り、ランドセルから宿題を取り出しテーブルに向かう。3時半になると支援員が点呼。「きょうも楽しく元気に過ごしましょう」。将棋やチェスで遊んだり、折り紙を折ったりと、それぞれに過ごす子どもたち。ふざけすぎて支援員が間に入ることも。同クラブを運営する田中まゆみさん(59)は「子どもたちは動きが激しいので目が離せない」と話す。

 同クラブは2教室あり、児童74人が登録。通常は60人前後が利用し、スタッフは支援員が7人、週に数回勤務する補助員が3人。田中さんは「子ども10人に対し1人が必要」と思い、職員確保に努めてきた。「子どもをただ預かるだけではない。それぞれの発達に応じた遊びや対応をしながら、安全も確保しなければならない。技能、知識、経験が求められる」と言う。

 長崎県によると、長崎県内のクラブは2014年度は328だったが、2018年度は377に増加。登録児童も少子化の中、約1万3800人から約1万7200人に増えている。長崎県学童保育連絡協議会の小山(おやま)浩会長は「背景には共働き家庭の増加がある。地域の人々の関係が疎遠になる中、声掛け事案などが起きており、親は心配。クラブでは子どもが安心して過ごせる」と話す。

 だが支援員の処遇は脆弱(ぜいじゃく)だ。全国学童保育連絡協議会の14年度の調査では、週5日以上勤務する指導員の年収は150万円未満が46.2%で、300万円以上は5.4%にすぎない。国も処遇改善に努めているが、低賃金はスタッフの確保や定着を困難にしている。

 そうした状況下、児童が40人でも1人でも全国一律に2人以上の配置が義務付けられていることへの疑問が、各地の自治体から上がった。今国会でその根拠となる児童福祉法が改正されれば市町村が関連条例を見直し、来年春から基準が緩和される見通し。だが小山会長は「子ども40人に対し支援員2人でも足りないと感じている。質の後退につながらないよう現在の基準は維持しつつ、児童数が極端に少ない場合には『特例措置』で対応してほしい」と要望する。

 また志佐児童クラブの田中さんは支援員の資質向上のため、制度改正に伴い15年度に始まった県の認定資格研修(16科目24時間)の改善を求める。現在、同クラブの支援員7人のうち研修修了者は2人(経過措置として2019年度までの修了予定者も支援員に含む)。松浦市のクラブは2015年度と2018年度が研修対象で、受講できる人数は限られていた。国のガイドラインが会場の定員を「おおむね100人程度」としているためだ。田中さんは「どの年度でも研修が受けられるようにしてほしい」と話す。長崎県は2018年度、従来の2会場から3会場に拡大し、2019年度も3会場で実施する予定だ。

 ■放課後児童支援員

 おおむね児童40人以下を1単位とし、単位ごとに原則2人以上の配置が、2015年度施行の厚生労働省令などで「従うべき基準」とされた。保育士などの資格や教員免許を持っているか、放課後児童クラブに5年以上勤務した人などで、都道府県が実施する認定資格研修を修了する必要がある。しかし政府の地方分権改革に対し、少人数の利用児童に2人の配置が困難とする意見が複数の自治体から寄せられ、政府は「参酌(参考にする)基準」に見直す方針。

子どもたちと遊ぶ児童支援員=松浦市、志佐児童クラブ