社説[しつけと体罰]親の懲戒権見直す時だ

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 「しつけ」と称した体罰をなくすためにも民法の「懲戒権」規定を削除し、子どもを虐待から守る社会へとギアチェンジを図るべきだ。

 相次ぐ悲惨な児童虐待事件を受けて、懲戒権を巡る議論が与野党双方から起きている。

 安倍晋三首相も先週の衆院予算委員会で「規定の在り方について法務省に検討させたい」と述べ、見直しに言及した。

 懲戒権とは、親が教育などのために必要な範囲で子どもを戒めることのできる権利である。

 2011年に改正された民法で、懲戒権は「子の利益」のために行われるべきだとの要件が加えられたが、現実にはしつけを逸脱し子どもの権利を侵害しているケースが少なくない。

 身体的虐待の大半はしつけの名目で行われる体罰がエスカレートしたものだ。懲戒権が虐待の口実に使われているという指摘もある。 

 千葉県野田市の小学4年生、栗原心愛(みあ)さんが死亡した事件で、傷害容疑で逮捕された父親は長時間立たせたりしたことを「しつけのつもりで、悪いことをしたとは思っていない」と供述している。

 昨年、東京都目黒区で5歳の女の子が両親から虐待を受け死亡した事件でも、「しつけの一環」との言葉が繰り返された。

 体罰を認める余地を残した懲戒権と、体罰もしつけとして容認する風潮は深く関わっている。ここに児童虐待を生む土壌があるのではないか。

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 国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が17年、国内2万人を対象に実施した調査で「他に手段がない時」を含めて6割近くの人が体罰を容認するという結果が出た。

 暴力を振るえば、手っ取り早く子どもを従わせることができるかもしれない。しかしこうした行為は、痛みや恐怖によって子どもをコントロールするものだ。時に取り返しのつかない事態に発展することもある。

 セーブ・ザ・チルドレンによると、体罰を法律で禁止している国は50カ国以上。法制化後、社会の意識が変わり、いち早く全面的に禁止したスウェーデンでは体罰を認める人は1割しかいない。

 体罰が子どもの成長に悪影響を及ぼすことは、いくつものデータで明らかになっている。必要なのは、たたかず、怒鳴らず、子育てができるよう保護者への支援を強めることだ。

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 東京都がきょう開会する都議会定例会に提案する子どもへの虐待防止条例案は、暴言なども含めた保護者による体罰禁止を盛り込んでいる。成立すれば都道府県では初となる。

 政府、与党が今国会に提出する予定の児童虐待防止法改正案などにも、体罰禁止規定を明記しようとの動きがある。

 子どもの権利を守るという姿勢を、公的責任において発信する意義は大きい。

 体罰を防ぐ法制度の整備と社会の意識を変える議論を両輪として進めてほしい。