トヨタ プリウス(2018年MCモデル) の実燃費を徹底検証!
今回の燃費テストに持ち出したのは、2018年12月にマイナーチェンジを実施したトヨタ 4代目プリウス。
2015年12月に登場した現行プリウスはトヨタの新プラットフォームであるTNGA(Toyota Global Architecture)を採用し、クルマとしては格段の進歩を見せてくれた。
しかし、そのあまりに個性の強いルックスは賛否両論で、2018年度の販売台数ランキングも日産 ノート、そして同門のアクアに次ぐ3位に甘んじてしまっている(とはいえ年間11.5万台も売れてはいるのだが)。
それが原因なのかどうかは定かではないが、12月に登場したマイナーチェンジ後のプリウスは、「プリウスの特徴である先進的なイメージを継承しつつ、親しみやすく、より知的で洗練された内外装デザインに変更」されている(トヨタニュースリリースより)。
とはいえ、プリウス最大の魅力は他を寄せ付けない圧倒的な燃費性能だ。3ナンバーサイズのボディを持ちながらもJC08モード燃費は39.0km/L(Eグレード)と、ライバルを圧倒する数値をマークしているのである。
◆トヨタ プリウス(2018年MCモデル) の内外装を画像でチェック
起用グレード
そこで今回はマイナーチェンジ後のプリウスで、その実力を改めてチェックしてみることにした。
グレードは「Aツーリングセレクション」で、JC08モード燃費は37.2km/Lとなっている。
今回のマイナーチェンジでは特に燃費や動力性能に関する部分についてはアナウンスがなされていないが、Sグレードの2WD車のバッテリーがリチウムイオン電池になるなど(4WD車は引き続きニッケル水素電池)細かな部分で変更が入っている可能性は大いにありそうだ。
燃費テスト概要
燃費測定は2019年1月31日に行い、天候は曇りのち雨。最高気温は10度程度とこの時期らしい気温の中でのテストとなった。
今回も朝10時ごろに青山にあるオートックワン編集部を出発し、高速、郊外路、市街地・街乗りの順で走行し、16時ごろに再びオートックワン編集部へ戻るルートを選択した。燃費の数値は車両に備わる燃費計を使用している。エアコンは24度設定のフルオートで、走行モードは「ECO」、クルーズコントロールは未使用としている。
トヨタ プリウス(2018年MCモデル)の総合実燃費は…?
トヨタ プリウス(2018年MCモデル)の実燃費は29.2km/L
今回のテストではトータルで160.0kmを走行し、全行程を走り切ったトータルの燃費は29.2km/Lとなった。
プリウスはWLTCモード燃費に対応しておらず、JC08モード燃費は37.2km/Lから考えると物足りなさを感じるかもしれないが、それでもカタログ燃費達成率は約78%ということで、特にJC08モード燃費との剥離の大きなハイブリッド車でこの数値は決して悪くないものと言えるだろう。
ちなみに、4代目が登場してすぐに実施した燃費テストでは28.8km/Lを記録している。その時も1月後半に実施しているため、季節的な差異は少ないと考えられるが、そのときのテスト車両は15インチで195幅のタイヤを装着する「S」グレードであり、今回は17インチで215幅のタイヤを装着していることを考えれば、若干燃費性能も向上しているとも考えられるし、誤差の範囲とも言える難しい数値である。
それではここからは走行シーンごとの燃費や走りっぷりなどをお伝えしていこう。
トヨタ プリウス(2018年MCモデル) 実燃費レポート | 市街地編
トヨタ プリウス(2018年MCモデル)の市街地・街乗りでの実燃費:28.6km/L
燃費の面では一番不利な状況となるストップ&ゴーが繰り返される市街地走行。十分速度が乗る前に再び減速し、そしてすぐ発進というのは、いくらハイブリッドシステムがサポートしてくれるとはいえ、燃費はどうしても悪化してしまうシチュエーションだ。
しかし、なんとそんな悪条件が重なる市街地走行にもかかわらず、53.0km走行してメーター上の燃費計は28.6km/Lという数値を指していた。
これは後述する高速道路の燃費に匹敵する数値であり、如何にプリウスが渋滞路でも効率の良い走りをしてくれるかというのを見せつけられた格好だ。なお、前期型での数値は28.1km/Lであり、ここでも若干ではあるが新型が上回る結果となっている。
少し前までのプリウスはブレーキのフィーリングがイマイチ、という評価をよく聞くことがあったが、今回試乗した新型では気になる点はほぼなかった。
唯一、極めて低速域でブレーキを踏むか踏まないかという非常に微妙な操作をしたときだけ、ブレーキが抜けたような空走感を覚えるときがあったが、通常そんな操作をすることは少ないと思うので心配は無用だろう。
トヨタ プリウス(2018年MCモデル) 実燃費レポート | 郊外路編
トヨタ プリウス(2018年MCモデル)の郊外路での実燃費:31.1km/L
郊外路は走行車両も信号も少ないため、一定のペースで走行できるシーン。
TNGAプラットフォームを採用したことでハンドリング性能が大幅に向上した4代目プリウスだけに、軽いワインディングのようなコーナーも軽快に走り抜けることができる。座面の位置を一番低くすれば、まるでスポーツカーのように両足を前に投げ出したような着座位置も取れるので、日本一のエコカーに乗っているという感覚はほぼなかった。
そんな郊外路を28.9km走行した燃費は31.1km/Lと、30km/Lの大台を悠々超える数値をマーク。前期型でも30.3km/Lという数値だったが、それをさらに上回る結果となった。
トヨタ プリウス(2018年MCモデル) 実燃費レポート | 高速道路編
トヨタ プリウス(2018年MCモデル)の高速道路での実燃費:29.0km/L
最後は高速道路を通るルートを振り返る。
今回も芝公園出入り口から首都高に乗り、東京湾アクアラインを経由して圏央道の茂原長南インターで下りるルートを走行し、走行距離は77.9km。
首都高では事故渋滞が発生し、アクアラインから圏央道では雨にも降られるというやや不運な状態ではあったが、メーターの燃費計は29.0km/Lを記録した。前期型でも28.3km/Lと郊外路を下回る数値となっているが、おそらくこれは高速道路の走行中はほとんど回生ブレーキでバッテリーに充電をすることができず、結果的にEVモードで走行できるシーンが少なくなってしまうからだろう。
ちなみに燃費を追求するために空力特性も考えられているプリウスは、走行中の風切り音が非常に少ない。さらに遮音材やノイズ対策もされているため、高速走行中でも車内は非常に静かな空間となっていた。
トヨタ プリウス(2018年MCモデル) 実燃費レポート | 総合実燃費編
トヨタ プリウス(2018年MCモデル)の総合実燃費:29.2km/L
今回の新型プリウスの燃費テストは、街乗り・郊外路・高速道路と合わせて160.0kmを走り、総合実燃費は29.2km/Lであった。
さすがにJC08モード燃費の37.2km/Lには及ばなかったものの、一昔前の高級車に匹敵するボディサイズと室内空間、そして静粛性を持ち合わせた車両であることを考えれば異次元の燃費性能と言える。
しかも、新型プラットフォームのTNGAを採用したことでドライブフィールも決して悪いものではない。むしろプリウスよりも運転が楽しくないクルマもあるぞ! と言ってしまってもいいだろう。
あとは見た目が好きか嫌いの問題となるので、そこは各人の判断に委ねたいところだが、そこにアレルギー反応がないようであれば一度試乗してみることをオススメしたい。新型プリウスのよさにきっと気付けるはずだ。
[筆者:小鮒 康一 / 撮影:小林 岳夫・小鮒 康一]