<再生への視点 統一地方選を前に>・2 諫早市区 新幹線開業効果 観光、人口増… 軸足は 「まち」の姿 描く時期迫る

 2022年度に暫定開業する九州新幹線長崎ルートの停車駅となる諫早駅で今月、新幹線駅舎が着工した。フル規格で整備が進む長崎-武雄温泉間に建設予定の5駅では“一番乗り”だ。今後の諫早市のまちづくりに向けた大きな一歩だが、5日朝、市内であった安全祈願に出席した宮本明雄市長は、新幹線開業効果を生かす施策を報道機関に問われ、こう即答した。「それが最大の課題」-。
 課題の一つは「素通りされない町」になるための魅力発信策だ。長崎ルートを巡っては、佐賀県の武雄温泉-新鳥栖間の整備方式が決まっておらず、市や政財界は関西圏と直結できるフル規格での整備を求めている。現在、諫早駅東側ではビル2棟などの再開発事業が着々と進む。「県央、島原半島の玄関口」を自負し、再開発総事業費約182億円の大プロジェクトを「百年の大計」と位置付ける市。ハード整備が先行する形で、産学官や市民による魅力創出行動計画が昨年度から検討されている。
 市中心部を流れる本明川、諫早公園の眼鏡橋、楽焼ウナギ、花の名所の白木峰高原、30もの滝が連なる轟峡、愛らしい形のフルーツバス停-。全域に点在する魅力を“ストーリー性”とともに発信する計画が求められるが、宮本市長は「徐々にアクセルを踏んでいく」とあくまでも慎重だ。
 「新幹線は利便性をアップさせる交通手段。諫早駅に降りて楽しんでもらう理由づけが必要」。こう語るのは諫早観光物産コンベンション協会の澤村正充専務理事。同協会は駅ビルなどを拠点に、イベントや物産販売を展開する構想を持つ。観光客に加え、市民も引き寄せ、にぎわいを生み出す考えだ。
 もう一つの課題は、島原半島3市と連携した観光振興策や諫早駅との交通アクセス向上。人気の小浜、雲仙両温泉は新幹線利用客の誘引を狙うが、島原、南島原両市側はフェリーで結ぶ熊本県からの誘客も視野にあり、諫早市との微妙な温度差は否めない。
 「諫早駅が本県だけでなく、九州、西日本の中でどのような結節機能を持ち、人が移動するかを先読みし、九州内周遊につながる交通ルートや島原半島内の魅力を紹介できる人材を育てることが4市連携の鍵」。島原半島観光連盟(島原市)の坂元英俊専務はこう指摘し、結節点の役割を意識した人材育成を提案する。
 暫定開業まであと3年。観光振興、企業誘致、定住促進-。総花的な開業効果を求めず、最も重視する政策に軸足を定め、「新幹線が停車するまち」の姿を描く時期が迫っている。

九州新幹線長崎ルートの暫定開業までに周辺再開発が進む諫早駅東口=諫早市永昌東町

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