熊本市繁華街、防犯カメラ急増 犯罪抑止へ期待の一方、監視社会への不安も

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熊本市中央区の繁華街に設置された防犯カメラ

 熊本市の繁華街を歩きながら目線を少し上げると、通路脇や店先に設置された「防犯カメラ」が至る所で目に入る。平成になり、犯罪の抑止効果などを期待して設置台数は急速に増えた。県警は「今や犯罪捜査に欠かせない」と強調。一方でプライバシーの問題や「監視社会」に対する不安の声も根強い。

 「平成の半ばごろから、カメラの犯行映像をきっかけに窃盗犯などが摘発できるケースが増え、需要が高まった」と県防犯設備協会の松本茂事務局長(67)。熊本市商業金融課によると、同市内の商店街が県や市などの補助金を受けて設置したカメラは2006年度は6台だったが、18年度には254台に上る。

 各地域の防犯協会が通学路などに設置したり、自治会などが飲料メーカーと連携してカメラ付き自販機を置いたりする活動も進んでいる。個人宅の物まで含めると「全てを把握するのは不可能」(県警)なほど、無数のレンズの目が私たちの行動を捉えている。

 県警は「県内の刑法犯認知件数は04年から連続して減少。防犯カメラの普及も大きな要因の一つ」と、防犯効果を強調する。

 捜査幹部の1人は「30年ほど前までは聞き込みや張り込み捜査が中心だったが、今では現場付近の防犯カメラ映像確認が必須」と打ち明ける。昨年8月、熊本市の介護施設で起きた傷害致死事件では、職員が入所者を殴る映像が施設内のカメラに残っており、逮捕の決め手となった。ひき逃げ事件の車種特定や、逃走容疑者の追跡などにも効果を発揮しているという。

 ただ、市民のとらえ方は複雑だ。同市の上通アーケードで買い物をしていた主婦(75)は「高齢者を狙ったひったくりなどの事件も多いので、カメラで見守られていれば安心」。一方、女子大学生(19)は「誰が管理しているか分からず、悪意を持って映像をネットに流出されるなどしたら取り返しがつかない」と懸念する。

 県は07年、プライバシー保護のため「映像の保存期間を最小限にし、確実に消去する」「設置していることを明示する」などの防犯カメラの運用指針を示した。だが、強制力はなく、映像の管理は設置者に委ねられているのが現状だ。 

 熊日が熊本市内の温泉施設約30カ所に取材したところ、2カ所が男性のロッカールームに設置していた。両施設は「映像は犯罪が起きた時に警察に提供する以外には一切使用しない」とするが、プライバシー侵害を懸念する指摘は強い。近年ではドライブレコーダーやカメラ付きのスマートフォンなどについても同様のプライバシーの問題が指摘される。

 熊本大法学部の岡田行雄教授(刑法)は、「警察への協力ばかりが強調され、個人のプライバシーや人権が置き去りにされた社会になっており、突然『被害者』になる怖さがある」と警鐘を鳴らす。(堀江利雅、前田晃志) 

(2019年2月21日付 熊本日日新聞朝刊掲載)