江戸期の玉締め式圧搾機 再現 島原・本多木蝋工業所

 和ろうそくの原料となる「木蝋(もくろう)」を伝統製法を用いて生産している長崎県島原市の本多木蝋工業所が、江戸時代の木蝋生産に使われていた「玉締め式圧搾機」を再現した。代表の本多俊一さん(63)は「木蝋の歴史を伝え、島原の伝統産業を守りたい」と話している。
 木蝋はハゼノキの果皮から油脂を搾り取って生産する。圧搾機は油脂を搾り取る機械で、機械下部の「蝋船(ろうぶね)」と呼ばれる臼状の道具に果皮を入れ、半円球の「玉石」を載せて圧縮し、油脂を搾り出す仕組み。
 再現した圧搾機は高さ2メートル、横幅1.8メートル。島原城内の民具資料館に保管されていた江戸時代の物とみられる蝋船を活用し、機械に組み込んだ。
 活用した蝋船はクスノキとみられる木製。幅約130センチ、高さ約50センチ、中央のくぼみは直径約40センチ。島原市教委によると、白土湖(白土町)の湖底に沈んでいた物で、約30年前のしゅんせつ工事中に見つかった。眉山が崩壊し、津波などで約1万5千人が犠牲になったと伝えられる1792(寛政4)年の「島原大変」当時の物と推測されている。
 島原藩は島原大変の復興策として、火山灰に強いハゼノキの植樹を奨励。木蝋を生産して財源危機を切り抜けた歴史がある。本多さんは「伝統を残すためにも当時の方法で搾ってみたい」との思いを抱いていた。
 本多さんは、江戸時代の圧搾機の構造について、同工業所で1937年から使用している油圧式圧搾機と「同じ原理」と推測。県外の資料館が所蔵している江戸時代の類似器具も参考に再現を模索し、知人らの協力を得て約2週間で作りあげた。
 本多さんは「伝統的技術を次世代に伝え、町おこしの起爆剤にもできたら」と期待する。同工業所は24日午後2時から、再現圧搾機の完成記念イベントを開き、実演もする。参加費500円。

再現した玉締め式圧搾機と本多さん=島原市有明町大三東、本多木蝋工業所

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