“神経締め”で魚が美味くなるのか検証してみた結果……劇的な変化に箸が止まらない!? 神経締め。脳と脊髄を破壊し、魚の死後硬直を遅くすることを目的とした秘技です。しかし、本当に気になるのは実行してから味に変化があるのか否か。今回は実際に神経締めを行い、食べ比べを行ってみました。これから神経締めを覚えたい方向けに、手順も合わせてご紹介しています。

魚が劇的に美味くなるらしい!

釣った魚を美味しく食べるため、先人たちは多くの技を開発してきました。

その中でも、神経締めと呼ばれる秘技をみなさんはご存知でしょうか?

生きた魚の脳やせき髄を破壊する技……なんだか残酷な響きですが、これを行うことで魚の味が激変するのだとか。

科学的な根拠もあるっぽい

神経締めを行うことで、具体的にどう言った変化が見られるのか疑問を抱かれる方も多いのでは?

魚は旨味の元であるアデノシン三リン酸(略してATP)を保持しており、このATPは暴れてエネルギーを消費したりストレス感じたりすると減少するといわれています。

つまり、神経締めを施すことで旨味成分の元を極力減らさず、鮮度を保つことが出来るというわけですね。

本当に効果があるのか?

理屈はよく分かりました。

ですが、気になるのは“味”なのです。

そこまで美味しくなる……というのであれば、試してやろうじゃありませんか!

神経締めをやってみた

というわけで実践です。

対象は処理の仕方で味の変化がでやすい「アジ」で試してみたいと思います。
※アジだけに……

①脳を破壊

ニードルを眉間から側線部方向に差し込み、脳を締めて魚の動きを抑制。

※今回は見やすいよう魚を持ち上げていますが、地面に置いて行う場合は身が痛まないよう下にタオルなどのクッションを敷いて下さい。

魚種で脳の位置は若干異なりますが、魚の口が開いたり、魚の動きが静止すれば脳締めが完了している合図です。

②脊髄を破壊する

脳締めが完了したら、ワイヤーを脊髄に挿入します。

ニードルパイプが誘導穴になっているので、脳締め作業からそのままワイヤーを入れることが出来ます。

初めての方はイメージが湧きにくいと思いますが、コツを掴んでしまえば簡単に感じました。

ワイヤーがうまく脊髄に入ると、ヒレが動いたりと変化が見られます。

③血抜きをする

ナイフやハサミを使用してエラにある血管をカットし、血抜きを行いましょう。

脳を締めましたが心臓はしっかり動いていますので、絶命しないうちに素早く行うことが大切ですね!

冷やす

氷の入ったクーラーボックスに入れて保冷して持ち帰りましょう。

魚に氷を直接当て一気に冷やしすぎると、氷水による浸透圧差で身がブヨブヨになったりとマイナス要因となってしまいます。

少量の氷でクーラー内の温度を5~6度に保つのがベストです。

アジの味をテイスティング

神経締めと野締めの2パターン用意し、アジの味をテイスティング。

どちらも死後50時間ほど経過しています。

果たしてどんな違いを発見できるのでしょうか。

まっちゃんクイズ

ここでいきなりですが『釣り好き!まっちゃんクイズ』の時間です。

上の写真は“野締めアジ”と“神経締めアジ”の熟成刺身。

どちらが神経締めをしていないアジか、いざシンキングタイム!

正解は

神経締めをしていない野締めのアジは……『B』が正解。

神経締めに比べ、“身の黒ずみ”が見受けられました。

見た目でも判断できるということは、味の違いもありそうですね!

こんなに違うのか

さぁ、実食! むむむ……ここまで差が出るとは、正直驚きです。

■野締め

神経締めを施したアジに比べ野締めのアジ刺は“生臭さ”が目立ち、また身に張りが無くブヨブヨっとした触感。

■神経締め
身の弾力が保たれており、それでいて旨味が増加している印象。箸とお酒が止まりません!

生臭さは全くないとは言えませんが、だいぶ抑えられている印象でした。

美味しい命に感謝

一見残酷に見える神経締めかも知れませんが、なるべく負担を掛けず楽にしてあげ、最高の状態で魚を頂くには欠かせない大事な作業です。

今回釣りも含め“魚の命を美味しく頂く”という感謝の気持ちを再確認した実演レポートとなりました。

今回使用した道具

今回は、ルミカの神経締めセットを使用。

神経締めで必要とするアイテムが一体化しており、準備手間が掛からない便利アイテムですよ!

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