「ふるさとなんて大嫌い」

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 「大村市なんて大嫌い」。女子高生がクールに言い放つ。「魚がおいしいなんて今さらだし、海が近いんだから当たり前」「ここじゃ平和ぼけ」…▲大村市が移住・定住者を増やそうと制作したPR動画だ。進学のため地元を離れる女子高生が、嫌いと連呼して旅立つ心に踏ん切りをつけようとするが、ふるさとの良さや温かい思い出を否定できずに最後は涙を流すという構成だ▲今年の春も、多くの高校生や大学生が、進学や就職を機にふるさとを離れることだろう。新しい世界でいろんな経験をしたいと、希望に胸をときめかせて▲もしかしたら、「仕事も遊ぶ場所も刺激的な出会いも何もない」「閉鎖的で息が詰まりそうな土地柄だからここにはいられない」と、ふるさとに否定的な思いを抱いて出て行く人がいるかもしれない▲そうした若者にもきっと、なじんで育った土地に対する郷土愛はあるだろう。否定的な思いと愛着とは、表裏一体ではないだろうか▲人口減少や若者の県外流出という深刻な事態に直面している本県。「ふるさとなんて大嫌い」と出て行った若者が、いつか郷土愛に駆られてUターンしてくれるならうれしい。もちろん仕掛けは要る。大村市の動画でも、女子高生の父親が「また帰ってくればいいから」と優しく声を掛けていた。(泉)