<再生への視点 統一地方選を前に>・4 南島原市区 世界遺産の持続的活用 消費分析なく対策困難 ガイドの高齢化も課題

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 南島原市南有馬町の「原城跡」。日曜日だった今月17日午後、史跡内の総合案内所にはガイドや仮想現実(VR)端末貸し出しを求め、多くの観光客がひっきりなしに訪れた。地元ガイドグループ「有馬の郷」の当番ガイド4人はフル稼働状態。70代の男性ガイドは「端末の説明や1組約1時間の案内など、土日祝日は対応が重なって大変な日が多い。でもお客が多いのはやはりありがたい」とうれしい悲鳴を上げた。
 原城跡は昨年7月、世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本の12資産)の構成資産。地元は悲願達成に沸き、県によると、昨年7~11月の5カ月で、原城跡には前年同期比約5倍の約3万人が来訪。22万人余りが来訪した「大浦天主堂」(長崎市)などに続き、構成資産別では3番目と好調だ。
 だが、約46ヘクタールと広大な原城跡への来訪者の周遊ルートや消費傾向を追跡調査するのは難しく、市は飲食費や宿泊費などの登録経済波及効果を算出していない。市などによると、近くの温泉宿泊施設「原城温泉真砂」など一部施設は潤ったというが、市全体まで恩恵が広がっていないのが現状。隣の雲仙市の温泉街や長崎市内に宿泊したり、フェリーで熊本県へ渡ったりと“素通り”されることが多く、地元関係者には「詳しい傾向が分からないと効果的な対策が打てない」と不満がくすぶる。
 前年比5倍の数字にも、「有馬の郷」会長の佐藤光典さん(73)は楽観せず、「あくまで一時的な“登録効果”」と気を引き締める。国内の世界遺産で、一般的に効果は1~2年かせいぜい3年といわれる。しかも原城跡は、大浦天主堂や「天草の崎津集落」(熊本県)といった近隣資産から車などで約2時間と遠い“飛び地”。観光のにぎわいを持続させるための誘客策や仕掛けが必要だ。
 原城跡の歴史や地元の魅力発信のため市が整備するガイダンス施設は、2019年秋ごろに実施設計ができる予定。島原・天草一揆で徹底的に壊された城跡だけに「ガイドの説明があると分かりやすい」とのニーズが多く、ソフト対策との多彩な組み合わせが鍵となる。「有馬の郷」の会員の大半は70代以上。佐藤さんは「構成資産は大半が離島や郡部で不利。ガイドの高齢化など課題もある。自助努力も当然大切だが、県が音頭を取ってシンポジウムや研修大会を定期的に各市町と共催してもらえれば、息の長い観光活用や相互連携につながるのでは」と期待をかける。

地元ガイド(右)の説明を聞く家族連れの観光客=南島原市、原城跡